究極的に良いアイデアは「革新」から「保守」になる
田貝:では良いアイデアの定義については、どう考えていますか?
関谷:これについては明確に答えを持っていて、「幸福度の最大化」が良いアイデアだと思いますね。幸福にできる人の数×量というか。だからニッチすぎるものは違うと思っていて、ニッチからはじまっても幸福にできる人の数を増やしていくべきだと考えています。
やはりiPhoneなんかがそうで、利用者が広がって地球全体の幸福度を上げている。究極的に良いアイデアや事業は、そうした革新から生まれて、世界全体、地球全体の保守になっていくサービスだと思います。

近山:オムロンの創業者であり、自動改札機やATMの開発を手がけたイノベーターである立石一真氏も、イノベーションには技術革新、科学的発見があることに加え、社会の変化を起こすことがポイントだと語られています。
保守って捉え方によっては、社会のインフラになるということ。自由に、簡単に手に入り使えるものになるのが、良い形なのだと思います。もしかしたら、何も考えずに着られてしまう着心地が良いものを提供できるようになることが、真にメジャーになるってことなのかもしれませんね。
関谷:「ニューノーマル」ってまさにその革新と保守のことだと思う。割とその2極に振り切るところが多いけど、実はその間が一番重要です。僕も昔は保守が嫌いだったのですが、おっしゃる通り洋服のインフラを作っている以上、より多くの人に使ってもらえるようにならなければ、良い商品と言えないのではないかと考えるようになりました。
近山:多くの人がそのアイデアに乗ることができて、広げられるかというのも、良いアイデアの条件なのかもしれませんね。
良いアイデアが生まれる環境・組織を作るポイント
田貝:お二人はメンバーの方々にアイデアを出してもらうよう働き掛けする立場にもあると思うのですが、良いアイデアが生まれるチームや組織を作るために心がけていることはありますか?
関谷:ポイントは、「コミュニケーション」「フィードバック」「給与待遇」にあると考えています。コミュニケーションは、物心両面の距離を縮めることを心がけていて、社長室を作らずフリーアドレスで物理的な距離をとにかく縮め、心理的距離を縮めるために社内のSNSやグループLINEにばんばん投稿している。驚くぐらいみんなスルーだけど(笑)、距離を近づけてモノを言いやすい環境が大事だと思っているので。また、一定水準を超える給与も安心して挑戦できる環境として大切です。
この3拍子が揃っている中で、イノベーションからニューノーマルを作るという自分たちのミッションがあったら、そのチームが自走しないわけがない。
近山:信頼関係の構築はとても大事ですよね。それができていないと本音で話してもらえないですから。だからこそ、「この人には言って大丈夫だ」という環境、間違ったことを言っても許される場所を作ることが大前提としてあると思います。

近山:もうひとつ、良いアイデアを生むために重要なポイントとしては、彼らにぶち破る壁を与えてあげること。それはなるべく小さくて硬いものがいいです。
「なんでもいいから持ってきて」「おもしろいと思うものを見せて」と尋ねても、そこからは100%良いアイデアは生まれてこない。それよりも、「こういう商品があって、これを地方の高校生に沢山売って」といった具体的な制限をかけてあげるほうがいいです。