「問われる立場」に立つことが、成長につながる
音部:中にはCMOの寿命は約2~3年という見方もありますが、後任育成や組織全体を強めていくにあたってのお考えを聞かせてください。
大村:人材育成の観点では、大なり小なりPL責任をもってもらうことが有効だと考えています。お金のことを考えながら、お客さんのことを考える。これには、必ず矛盾が発生します。それをどう解決していくか、考えて考えて考え抜く経験は非常に大事な経験となります。極論ですが、失敗して赤字でも全然良いんです。それがなぜ起こったのかを考えて、次の施策につなげていけば良いのではないでしょうか。
音部:PL責任をもつと、自分のやったことの結果がリターンとして返ってくるので、マーケターとしての感覚知が養われますよね。工藤さんはいかがですか。
工藤:状況変化が激しい時代、現場に権限委譲しなければならない場面が増えてきています。今後は自分で問いを立てられる人が必要とされるのではないでしょうか。ユーグレナでは、そういった人材を育成するために、毎週1on1ミーティングの時間を設けています。今何が課題だと思っているのか、なぜそう思うのか、とにかく答えを自分で導き出す。そういったトレーニングを行っているんです。
ただ、問いにも色々あります。ブランドや商品、自分の想いなど、何が起点になっているかは重要です。たとえば、課題解決を起点とした問いであれば、そのプロダクトやブランドで自分が何を成し遂げたいのかが明確になります。一方で、商品やブランドを起点にすると、目指すゴールが描きづらく、実になるものが小さいのです。つまり、私が言いたいのは、課題解決(パーパス)ドリブンな人材であれ、ということです。
音部:これまた興味深いことに、対照的ですね。目的ドリブンのCMOが資源を中核に沿えた仕組みの理解を部下に促す一方で、資源ドリブンのCMOが目的の明示を部下に促す。
大村:おもしろいですね。どちらが正解というわけではなく、戦略のステージや規模によって、違ってくるのかもしれません。
工藤:手段にとらわれずに、それぞれが自発的に成長していくという点では、共通していると思いました。
未来のCMOへ贈る言葉
音部:最後に未来のCMOへのアドバイスをお願いします。
大村:CMOに限らず、すべてのリーダーに求められるのはポジティブであることだと思います。もう1つは、楽しんで仕事をしていること。ポジティブであれば、色々なところに目が向き、自分の気が付かなかったことも楽しめます。仕事一筋にならずに生まれてくるインスピレーションもあるんですよ。私自身、マーケターになってから、「これでお金をもらっていいの?」と思うぐらい楽しんでいます。何事にもゲームやチャレンジのような感覚で、取り組んでいただきたいです。
工藤:キャリアの目的は人それぞれですが、役職としてのCMOにこだわる必要はないと思っています。「社会にこういうインパクトを起こしたい」「こういう課題を解決したい」といった先に、その役割があるのではないでしょうか。キャリアにおいても、「社会課題ドリブン」「パーパスドリブン」であってほしいと願います。
