DMの開封率はコロナ禍でも昨年と同水準
――本日はトッパンフォームズ 常務取締役 企画販促統括本部長の添田秀樹さん、企画販促統括本部 販売促進本部 メディア推進部 デジタルメディアグループ 担当課長の今井尋さんにお話をうかがいます。まず、お二人のミッションをお教えください。
添田:弊社は情報領域における知見を強みに、デジタル・アナログを掛け合わせたソリューションを通じて、ビジネスの効率化を支援しており、マーケティング・販促に関わるソリューションも数多く提供してきました。私は企画、販促、IoT・カード、RCS、そしてビジネスプロダクトという5つの部門を統括する立場で、それぞれの部門の連携を強化し、お客さまに則したサービスの提供を推進しています。
今井:私は販売促進という営業支援の部門に所属し、お客さまにご提案する新しいメディアの企画・開発を担当しています。現在はデジタルメディア担当として、DMなどの紙メディアとデジタルを融合したサービスの企画やプロモーションを行っています。
――では、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした企業と生活者のコミュニケーション変化についてお聞かせください。外出を控える動きは生活様式にも企業活動にも大きな影響を与えていますが、DMに関してはどのような動きがありましたか。
添田:弊社では長年、印刷物の製造・販売、そしてデータ・プリント・サービスと連動したデジタルサービスを提供してきましたが、今回、新型コロナウイルスの影響により、紙とデジタルが連携・融合する流れが一気に加速したと感じています。
今井:生活者側の変化については、弊社のモニター調査から紐解くことができます。生活者の手元に届くDMの推移を見ると、緊急事態宣言が出されていた最中は送付数が大幅に減っていたことがわかります。ECの需要急増により一部の企業が在庫の出荷が追いつかずにDMの発送を取りやめたり、店舗への来店促進や展示場でのイベントを中止したりするケースが多発したことが影響しています。その一方、通信販売、健康食品、教育業界などのDMは顕著に増加していました。
そして緊急事態宣言解除後は、全体的なDMの送付数は徐々に戻りつつあります。再度、緊急事態宣言が出た場合、おそらくまたDMの発送は影響を受けます。しかし、企業側も徐々に準備をしてきており、5月とは状況が異なるでしょうし、デジタルと融合した形のDMは残ると考えます。コロナ禍とともに変化をともなったDMになるでしょう。
また、DMの開封率に関しては、コロナ禍においても昨年と同水準の結果が出ています。全体の54.3%が郵送のDMを開封しており、手元に届く紙の郵便物には依然高いポテンシャルがあることがうかがえます。
在宅の生活者と接点を “One to Many”の新たな戦略
――対面の接点が作りにくい状況は、今後しばらく続くと思われます。各企業はこの状況をどのように乗り切っているのでしょうか。
今井:どの企業も様々な工夫をされていますが、その中で非対面・オフラインの接点としてDMを有効に活用いただいています。
あるガス会社ではDMを送付し、そこからQRコードを読み込んでもらうことでバーチャル展示場へと誘導しています。告知はDMに加えて、Web上のLPやEメールでも実施。実はリアルの展示会も開いており、告知~来場までクロスチャネルで接点を用意し、お客さまに最適な方法を選んでいただけるようにしたそうです。
今井:また、強いインパクトを与えるため、手元に届いたDMを開封すると大きなポスターになる「ポスターDM」や、組み立てて直立させることができるスタンド型のDMを展開したケースもあります。昨今、DMのOne to One化が進んでいると言われていますが、コロナ禍で家族が在宅するようになったことを受け、一つのDMを家族全員に見てもらう“One to Many戦略”をとる企業が増えているのではないでしょうか。
添田:EメールやSMSでアプローチしたユーザーに対して、その直後に紙のDMでアプローチしてエンゲージメントを高めたいというご要望が増えてきています。こうした多様なニーズに、小ロット・短納期で対応できるのが「CloudDM」です。
MAツールと連携し、パーソナライズDMを即時に発送
――「CloudDM」にはどのような特徴がありますか。
今井:「CloudDM」は、 DMの課題となっていたスピード感やコスト、パーソナライズができないといった点を解決し、デジタルマーケティングの一つの武器として紙のDMを活用できるようにすることを目指したDMパッケージサービスです。DMの自動化、即時化、パーソナライズを可能にし、デジタルとの融合を実現します。
今井:まず、自動化という面では、多くのマーケターが取り入れているSalesforce Marketing Cloud、Salesforce Pardot、Marketo EngageといったMAツールと自動でデータ連携し、送付したいリードや顧客に自動的にDMを送れるように準備しており、12月ごろに提供を開始する予定です。連携可能なMAツールについては、順次増やしていく予定です。
これにより、郵送のDMでも即時コミュニケーションが可能になるだけでなく、顧客属性やキャンペーンのセグメントごとにクリエイティブを作り分けてパーソナライズな内容で届けることも容易になります。さらに「CloudDM」ではデザイン制作までワンストップで請け負っていますが、弊社にはこれまで長年培ってきた制作ノウハウがあるため、訴求性の高いデザインを制作できます。
たとえば、約7割の方が5秒以内にDMを開封するかどうかを判別するため、一瞬でDMがどのように見られるのかといった分析を用い、デザインを制作しています。また被験者の視線情報を可視化する「視線計測調査」や、脳波を利用した「感性評価」なども活用し、UI/UXの改善に取り組んでいます。
添田:現状、マーケティング戦略については紙とデジタルの両極化がみられ、いずれか片方のみを採用するケースが多いと感じています。弊社が目指すのは、紙とデジタルの融合を進め、両者の長所をうまく取り入れたサービスです。「自動化」「即時性」「パーソナライズ」により、DMの効果は向上していくでしょう。
今井:そうですね。「CloudDM」は月間のご利用通数で費用が決まる、従量課金制を採用しているため、スモールスタートでお試しいただくことも可能です。また、最短翌日発送も実現しています。
マジックナンバー分析を活かしたDM送付も実現
――すでに「CloudDM」を活用した様々な事例が登場しているそうですね。具体的にどのような施策が行われているか教えてください。
今井:あるクレジットカード会社様では、デジタル施策を後押しするために「CloudDM」が使われています。クレジットカード入会後に、会員専用ページの登録やスマホ決済アプリの設定を促進するためEメールを送信。さらに「アプリへのご登録はお済みですか?」といったご案内を行うDMを送付しています。
今井:どのチャネルでご案内をするのがベストなのかは、お客さまによって異なりますよね。「CloudDM」を利用することで、Eメールを開封していないお客さまに絞ったDM送付が自動で実現しますし、送付内容をパーソナライズすることも可能です。
――一人ひとりに応じたコミュニケーションが可能になっているのですね。
今井:はい。他にも、ある通販会社様では、マジックナンバー分析の結果を活かしてDMを送付しています。分析によって、入会の1週間後に紙のDMを送ることで利用率や継続率が高まることがわかっていたのですが、以前はその月に入会したユーザーに対して、月に一度まとめてDMを送ることしかできていなかったそうです。
そこで「CloudDM」を利用し、MAツールの登録情報を基に、入会から1週間が経ったユーザーだけに、ピンポイントでDMを送る仕組みを確立。お客さまごとに最適なタイミングでDMを送れるようになりました。
また別の通販会社様は、商品を購入したお客さまに対するアフターフォローに「CloudDM」を役立てています。これは掃除機や美顔器、調理器具などについて、購入後にオプションの商品を欲しくなるケースがあるためです。この事例では、ある商品を購入したお客さまに対して、2週間後にオプション商品のご案内DMを送り、関係性を強化しています。
――他にも様々な活用の可能性がありそうです。最後に今後の展望をお聞かせください。
添田:「CloudDM」によって顧客起点で紙のDMを送付することで、ロイヤルティを引き上げながらインパクトの大きい施策を実行できるようになりました。引き続き、企業がデジタルとアナログの両方の強みを活かしたコミュニケーションを実現できるよう、手法やサービスを充実させていきます。
今井:弊社では11月26日(木)に「デジタルマーケティング時代のDMセミナー『コロナ禍の今だからこそ、非対面ツールとしてのDMの重要性』」というタイトルでセミナーを行います。
セミナーでは、冒頭お話したコロナ禍におけるDMの受け取り通数やDM受け取り後のアクションの推移、業界ごとの傾向をさらに詳しくする予定です。また、デジタルマーケティングとアナログのDM、両方の良さを引き出すコミュニケーションについて、事例も交えて解説します。BtoC、BtoB問わずお客さまとの接点の再設計に役立つ内容を用意していますので、ぜひご参加ください。
――本日はありがとうございました。