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ACIDMAN大木さんに聞く、コロナ禍の配信ライブとファンコミュニティで見つけた新しい体験価値

 新型コロナウイルスの影響を大きく受けている音楽業界。キャパシティは制限され、コロナ前のライブ体験を提供するにはハードルが多い状況ですが、アーティスト自身は現状をどう捉え、ファンに対しどのような体験を提供しようとしているんでしょうか。本記事では、ロックバンドACIDMANのボーカルギターを務める大木伸夫さんと、ファンコミュニティアプリ「Fanicon」を運営するTHECOOの代表、平良真人さんに音楽業界で今後求められる顧客体験について聞いてきました!

2020年3月のライブをゲリラで配信

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、新型コロナウイルスの影響を受け始めた2月~3月ごろ、ACIDMANがどういった活動をしていたか教えてください。

大木:当時はまさか今みたいな事態になるとは思っていなくて。ただ、少しずつ状況が悪化していくのを見ていたので、常に今後の活動について考えて動いていました。

ACIDMAN 大木伸夫さん
ACIDMAN 大木伸夫さん

大木:最初に心配していたのは、ACIDMANが東日本大震災以降、毎年福島で3月11日に行っていたワンマンライブの開催です。スタッフともギリギリまで開催可否を議論したんですが、今回は難しいと判断しました。

 でも中止で終わりたくないと思った僕は、急に「無観客でやる」と言いだしたんです(笑)。今でこそ無観客での配信ライブは当たり前のように行われていますが、当時はほとんど行われていませんでした。

MZ:開催直前に配信ライブを決めたとのことですが、調整が大変ではなかったですか?

大木:YouTubeと僕のFanicon内で生配信することは決まったんですが、配信機材やカメラなどの環境を整えるのにも数百万円はかかるし、簡単に実現できるものではないと気づかされました。でも元々被災地への寄付を目的にしているライブなので、なんとか実現させたくて。

 そこで、ワンカメで撮影するというアイデアを思いつきました。親友でもあるアキさん(映像監督の小田切明広氏)に頼んで、20kg近いカメラ1台で撮影してもらいました。

 また、この配信ライブのことはあえて一切告知せず、配信前日に「大木から重大な発表があります」とだけ発表しました。そして、当日福島のライブハウスの楽屋から生中継をして、「今からライブをやります」と伝え、そこからステージに移動してACIDMANのライブを始めるというサプライズ演出をしました。

 最初の楽屋からステージまでの移動、ライブも含めた全てを一台のカメラで撮っていたので、ドキュメンタリー風の少し変わったライブ配信を実現することができました。とても緊張しましたが、非常に興奮した体験でしたね。配信終了後から深夜までTwitterやYahoo!のトレンドに上がり続けるなど、ありがたいことに大きな話題になりました。

いち早く仕掛けて、成功事例を共有する

MZ:まだ周りがほとんど配信ライブをしていない中で、カメラ1台でゲリラ配信というかなりチャレンジングな配信をしていたんですね。流行拡大が大きくなる前に、その成功体験は非常に大きかったんではないですか。

大木:そうですね。配信ライブの成果やコスト、ノウハウもミュージシャン仲間に積極的に共有しました。普段ならライバルですが、今は音楽業界全体で力を合わせていくことが必要ですから。そして、新たに実施したのが7月11日の生配信ライブ「“ THE STREAM ”」です。

MZ:7月11日の配信ライブのレポートも拝見しましたが、VJによる演出など、普段のライブとは違う配信ならではの体験を提供していたと思います。この辺の演出に関しては、元々構想にあったのでしょうか。

大木:何ができるかをゼロから考えていたので、やると決めた段階ではまだなかったですね。THECOOの代表である平良さんにも相談して、ライブ配信サービス「Fanistream」などを通じて得られた演出のノウハウなどを学ばせてもらいました。タイポグラフィを使った演出は、平良さんにアイデアをいただいて取り入れました。

 さらに、リアルな演出も組み合わせたいと思ったので、カメラワークを駆使して、メンバーが瞬時にステージを移動しているように見せたり、元々何もなかった場所に曲の途中でフラワーアーティストの宇田陽子さん(logi plants&flowers)の作品が現れたりする演出をしました。

“ THE STREAM ”
“ THE STREAM ”

MZ:平良さんにお聞きしますが、当時どのような相談を受けていたのでしょうか。

 THECOO株式会社 代表取締役CEO 平良 真人さん
THECOO株式会社 代表取締役CEO 平良 真人さん

平良:大木さんはアイデアマンであり、さらにテクノロジーへの理解もある方なんです。配信ならではの演出について、ITの視点からどんなことができるのかと、様々な相談をしていただきました。その中で現実的なものを探っていく中でご提案したのが、タイポグラフィを使った演出でした。

 この経験は、我々も、大木さんをはじめとしたアーティストの皆さんの実現したい演出を叶えられる技術を開発していかないといけないと、非常に勉強になりました。

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/11/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/34875

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