モビリティマーケティング参入の経緯とは?
ロイヤリティ マーケティングでは幅広い消費者にリーチするデータがあること、「おトクな情報を届ける」というイメージが定着していることを強みに、モビリティ領域への参入を進めている。モビリティサービスに参入した経緯について、蛭川氏は次のように話す。
「自動車業界において、生活者のニーズは所有から使用へと大きく変化しています。MaaSの認知が拡大し、自動車のシェアリングサービスを使うユーザーは徐々に増えつつあります。そのとき当社のデータベースは、変化するユーザーの姿を捉え、的確にアプローチする上で大きく貢献するでしょう。今後も、自動車メーカーとのデータ連携や公共領域への貢献も進めていけたらと考えています」(蛭川氏)
モビリティ領域での取り組みは、(1)Pontaリサーチ会員「自動車パネル」と(2)「Ponta Mobility」に大別される。
(1)の「自動車パネル」では、自動車の保有者および非保有者への定量・定性調査を通じて、価値観をひも解いていく。Ponta会員のうち約170万人の「Pontaリサーチ会員」の中から、16万人に及ぶ自動車パネルを形成し、クルマの乗車中や降車後の利用実態を分析した。「自動車パネル」に属する会員に、基本属性や保有車種、今後の所有意向などの30設問以上にわたるアンケートを実施したところ、8つのクラスターに分類できたそうだ。
この分析を基に、たとえば各クラスターが最も利用している自動車メーカーをプロットしたり、ブランドの継続意向などを調査したりすることが可能になる。
Pontaデータ×移動データを基に、最適な情報を届ける
続いて(2)の「Ponta Mobility」は、スマートドライブと共同で企画・開発を進めている。ロイヤリティ マーケティングの上原氏とスマートドライブの石野氏が、具体的な活用イメージを解説した。
「Ponta Mobility」は、Ponta提携店舗やその周辺の利用データと自動車での移動データを掛け合わせ、利活用するというものだ。移動データから自動車の利用実態を分析し、自動車業界のマーケティングに貢献するとともに、Ponta会員の興味や関心に寄り添う新たな事業・サービスの創出にもつなげていく。
今年5月には、富山県、石川県で「Ponta Mobility」の実証実験を実施した。Ponta会員の自動車パネルから5人を選定。スマートドライブの専用デバイス(ビーコン)を提供し、このデバイスをクルマのシガーソケットに挿し込むことで、デバイスに搭載された高性能センサーが運転操作を計測し、そのデータがクラウドにアップロードされる。
実験ではPonta会員(ドライバー)に移動方法や走行時間などのデータを提供してもらう代わりに、各会員向けにカスタマイズされたインセンティブをオファーする。実験後の拡がりとしては、たとえば家族の安全を確認する見守りサービスや、ドライバーの安全運転スコアに応じて自動車保険の料率が変化するテレマティクス保険の検討を進めていく。また、ジオフェンスを利用してガソリンスタンドやドライブスルーなどに近づいた際に、プッシュ通知でお得な情報を届けることを目指す。
「ローンチ時は移動データを取得できる専用アプリを提供し、そのアプリを通じてポイントやクーポンを提供する仕組みを考えています。月額課金モデルも模索中です。コロナ禍で変化した消費者の移動傾向や行動を的確に捉えることができるよう、サービスに磨きをかけていきたいと考えています」(上原氏)