中小企業にとってコンテンツマーケティングが相性抜群な理由
差別化の側面以外にも、中小企業がコンテンツマーケティングに取り組むべき理由があります。コンテンツマーケティングは中小企業にとって相性抜群の施策なのです。
大企業にはないニッチなサービス
まずは冒頭から述べているように、中小企業は大企業にはないニッチなサービスを展開していることが強みといえます。ニッチだからこそ、そこに付随する業界やサービスのノウハウは社内に大いに蓄積されているはずです。後はそのノウハウを活かし、顧客が求めている情報をコンテンツで伝えるだけでいいのです。
顧客視点に立ったコンテンツで顧客の疑問に答え、課題策を提示することで信頼を獲得することができます。理想は業界内で一番の信頼を得て、「この企業に聞けば何でもわかる」というオピニオンリーダーのような存在になることです。
顧客との距離の近さと、小回りの利く組織体系
中小企業の特徴として、顧客との距離の近さと、小回りの利く組織体系が挙げられます。一人ひとりの顧客の声を拾いやすく、さらにその声が全社的に共有しやすい環境にあるといえるのです。
後述しますが、コンテンツマーケティングの成功のカギは、「コンテンツマーケティングに取り組むという強い意志が全社的に共有できていること」にあります。全社員が「顧客視点」の重要性を理解できているかを、コンテンツマーケティングに取り組む前、あるいは現在進行形で取り組んでいる企業は常にチェックしていくことが必要となります。組織体系の面でも、中小企業は取り組みやすいと言えるでしょう。
ここからは3つの事例を通じて、中小企業にとって有効な戦略を紹介していきます。
戦略(1)顧客の問いに徹底して答える
コンテンツマーケティングの成功例として有名なのが、米国のプール施工請負会社「River Pools and Spas」です。同社の施策について伝えるニューヨークタイムズの記事によると、リーマンショックの影響により同社は危機を迎え、コンテンツマーケティングに取り組み始めたといいます。
その結果、広告費は10分の1に削減され、売上を伸ばして危機を脱したというのです。このストーリーで注目すべきは、当時の同社の従業員は20人ほどだったということ。コンテンツマーケティングは大企業でなくても取り組めることがわかります。
同社のオーナーとして危機を乗り越えたMarcus Sheridan氏は、記事の中で「多くの業界で課題となっているのは、企業が顧客からの問いに答えず、自分たちの会社のことを伝えたいと思っていることだ」と指摘しています。この言葉に裏打ちされるように、同社では「顧客が知りたいことに答える」ことを徹底しました。
たとえば「WHICH IS BEST: FIBERGLASS, CONCRETE, OR VINYL LINER?」というページでは、動画や記事、インフォグラフィックを用いてファイバーグラス製、コンクリート製、ビニールライナー製のプールの特徴や値段を解説しています。
ここでのポイントは、同社はファイバーグラス製のプールを提供しているのにもかかわらず、「ファイバーグラス製が一番良い」という視点ではなく、「どのプールがあなたにとってベストか」という視点でコンテンツを展開しているということです。ファイバーグラス製の欠点についても包み隠さず紹介しています。
自社で提供するファイバーグラス製のプールの欠点についても記載している
(タップで拡大)
「自社のサービスの欠点を伝えることで顧客が逃げてしまうのではないか」と心配になる方も多いでしょう。しかし顧客は「ここまで正直に話してくれる会社は信用できる」とポジティブな印象を持つのです。自社にとって話したくない情報ほど、顧客にとっては知りたい情報であるケースが多いもの。ここまでして初めて、顧客のエンゲージメントを高めることができます。
同社のコンテンツはこのほかにも、質の高いものが揃っています。顧客視点さえ見失わなければ、大企業でなくてもコンテンツマーケティングを展開し、成功できることを物語っています。
戦略(2)コンテンツで潜在顧客を掘り起こす
地域に密着したニッチな情報を発信するという視点で参考になるのが、米国・ニュージャージー州で不動産業を営む「Weiniger」です。同社のホームページでは不動産に関するコンテンツだけではなく、ニュージャージー州のレストランやスーパーマーケットなど、地元の企業だからこそ紹介できる情報を伝えています。
コンテンツは記事だけではありません。地元の小学校を取材し、その様子を伝える動画もYouTubeで公開しています。こちらは少し手間がかかっていますが、まるで地元のテレビ局で放送されているものかと思うほどのクオリティです。
同社のサービスは、「ニュージャージー州に住みたい」という需要があってこそ成り立ちます。不動産の魅力を伝えるだけでなく、地域に密着したニッチな情報を届けることが、潜在顧客の掘り起こしにつながっているのです。「自社だからこそ語れる情報は何か」という視点に立った同社のコンテンツは、多くの中小企業にとって参考になるでしょう。
