気づかなかったマーケティングの種を探せ!
ここから、その3つの要因を見てみよう。
第1の要因:油断している競合が多い業界
まず「ライバルが寝ている」ということに気づいた点は見逃せない。運送業界は、典型的な「腰の重い業界」だ。そういう業界で神林専務のようにWebにまじめに取り組めば、すぐに頭角を現すことができる。
関西のあるクライアントがこんなことを言っていた。「僕が成功したやり方は、独り占めしたらアカン思て、まわりの仲間に“こうやったら儲かるからやれ”言うんですが、やらへんね。みんな、新しいことは嫌い。動きたくないんや」と。このクライアントがいる業界は電設会社。みな下請け根性が染みついて、グチはこぼすが行動はしないという。
こんな話もある。ある保険のトップセールスマンが営業セミナーで、自分のノウハウを惜しげもなく伝えた。すると聴講者から「そんなにノウハウを教えたらライバルが増えてしまう恐れはありませんか」と質問が出た。だが講師いわく「増えません」。なぜかというと「今日の私の話を聞いて、実際に行動する人は4%。行動してうまく行く人はそのまた4%。だから結局1%も成功できません」。
話を聞いて感心する人は多いが、行動する人はそれほどに少ない。そしてビジネスでいえば、自分の属する業界が「腰の重い人の集まり」である場合は、大チャンスなのである。

第2の要因:地縁を重視したマーケティング
次に、広告テクニック的な要因。神林専務はキーワード広告では「○○代行 東京」のように地名を入れたキーワードを使っている。運送業界は、典型的な「地縁業界」だからだ。地縁業界とは、歯医者、散髪屋など、「近所にある方がありがたい業種」のこと。運送会社の場合も、お客は自分の近所にある会社とつきあいたいものである。その方が、自社から、運送会社に荷物を運び込むまでの手間やコストが削減できる。
こうした業種のキーワード広告は「○○ 東京」のように、地名を入れるのがよいとされる。キーワードマーケティング研究所の滝井秀典さんによると、たとえば歯医者さんでは「インプラント (地名)」というキーワードで当てているところもあるそうだ。
第3の要因:具体的な社名でわかりやすさと信頼性をアピール
さらに考えると「八光社梱包運輸」という社名も、Web来訪者の信頼を得ている要因であると考えられる。たとえば製造業では、製品名を冠した社名をつけている会社がよくあることに気づく。
このように、製品名そのものを社名とすることによって、その製品に対する、わきめもふらないまじめな態度、コミットメントが感じられる。それが結果的に、その会社に対する高い信用につながるのだ。
「八光社梱包運輸」という社名を見ると、「梱包運輸」に特化しているのだなとすぐわかる。「梱包」と「発送」の両方ができる会社を探している見込み客にとってはわかりやすく、信用性が高い社名である。

まずは「商売の基本」を押えることが第一
今回、皆様に伝えたかったのは、Webマーケティングのテクニックに走るより先に、まず自分の商品は「いつ・誰が・どんな時に必要としているのか(ほしくなるのか)」という、その「商売の基本事項」をきっちり押さえておこうということ。
次回は「業者に頼んだ中途半端に小ぎれいなWeb」と「社長が自ら作った素人っぽいWeb」とどちらがよいかというテーマを考える。もちろん、私の結論は後者なのだが、その理由を例によって実際の中小企業のWebサイトを見ながら分析していく。乞うご期待!