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全国コンテンツマーケティング探訪~現場の声からヒントを得る

動画に出演した営業スタッフの成約率が上昇!広島のリフォーム会社が作ったコンテンツマーケの好循環

誰にとってもわかりやすいコンテンツにするために

 YouTubeではノウハウ系の動画も人気を得ており、網戸の張替え方を解説する動画は18万回再生されている(同月執筆時点)。

2020年4月にアップされた網戸の張替え方を解説する動画

 この解説動画がアップされた当時は、全国に緊急事態宣言が発令されていたころ。家で過ごす時間を有意義に過ごしてもらおうと企画された。同社を直接検索したオーディエンスではなく、網戸の張替え方を検索しているオーディエンスの流入が圧倒的に多いといい、同社の認知向上に結び付いている。

 ノウハウ系の動画は「クロスの貼り方」「玄関網戸の取付方法」など多岐に渡る。このようにノウハウを開示することで、顧客はリフォームの一部の作業を担えるようになる。それはリフォーム費用を抑えることにもつながり、顧客の利益になるという。

 動画制作で気を付けているのは、誰でもわかるようになるべく専門用語を使わないようにすること。「設計担当のスタッフが出演する場合は難しい用語がどうしても多くなる。そういったケースでは、質問役を付けて対話形式にするなど工夫している」と槇田室長は解説する。顧客に寄り添ったコンテンツで積極的に情報を開示し、信頼を得ていくという姿勢は、ここでも表れているといえるだろう。

ペルソナありきの姿勢が好循環につながる

 同社の特徴の一つが、「ペルソナありきでコンテンツの戦略を立てている」という点だ。リフォームの顧客となると40~50代が多く、若年層のリーチに課題を抱えていた。そこで、若年層のへアプローチを行おうと動画に力を入れたのだ。ペルソナは職業について具体的な企業名や職種を設定し、年収なども想定した。

 結果的には、若年層ではなく従来の顧客層が主なオーディエンスとなり、槇田室長は「あまりうまくいかなかった」と苦笑する。しかし、ペルソナがしっかり設計されているからこそ訴求力のあるコンテンツ制作が実現し、多くの再生回数を獲得できているのだろう。「とにかくコンテンツを充実させなければ」と安易に動画制作に力を入れ始めるケースもあるが、ペルソナ設定など戦略があってこそコンテンツは力を発揮するのだ。方向性の微調整は、コンテンツを制作してみて、その後でいい。

 ペルソナ設定では、同社へのエンゲージメントが高い顧客の声を参考にすることもある。現在はエンゲージメントが高い顧客を約20人ピックアップし、イベント開催などの際に意見をもらうなど、ファン層にいる顧客とともにコンテンツを作り上げている。もともとコンテンツに力を入れていたこともあり、施工事例の取材で協力を得るなど、エンゲージメントの高い顧客と交流する習慣はあったという。

 コンテンツがファンを生み、交流の場を作り、次のコンテンツにつながっていく。従来からコンテンツに力を入れていたことで、良い循環を作り上げることができたのだ。

ペルソナありきのコンテンツがファンを生み、ファンの声からよりペルソナを磨き上げる良い循環ができあがっている
ペルソナありきのコンテンツがファンを生み、
ファンの声からよりペルソナを磨き上げる良い循環ができあがっている

動画に出演した営業スタッフの成約率が上昇

 コンテンツマーケティングを展開する際、現場の社員の協力を得ることに課題を感じるケースも見られる。しかし、同社の公式YouTubeチャンネルには多くの営業スタッフが出演しており、協力を得られているように思える。

 「当初は社内の反応から、コンテンツに力を入れることについて理解を得ることに難しさを感じることもあった」。槇田室長はそう振り返る。しかし、動画を観た顧客が営業スタッフと接する際に「動画に出ていた人が来てくれた!」という反応を示すようになったことで、状況が変わっていったという。「お客様が営業スタッフのことを“先生”として見るようになった」(槇田室長)との言葉の通り、営業スタッフに対する顧客の信頼感が高まるという効果が見られた

 また、商談で顧客に施工事例の動画を見せることで、言葉で表現することが難しいリフォームのイメージをスタッフと顧客で共有しやすくなった。その結果、動画に出演した営業スタッフの成約率が上がり、納得感につながることとなった

 槇田室長は「入社したときに『コンテンツになりそうなものがたくさんある』と感じた」と振り返る。すなわち、社内に顧客に伝えられそうなノウハウが多くあったということだ。営業スタッフ、設計スタッフ、サポーターズはそれぞれ専門知識を持ったプロといえる存在である。顧客にノウハウを伝え、育てていく。同社の事例は教師が生徒を導いていくように、コンテンツによって企業が顧客を導く可能性を示しているといえるだろう。

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既存顧客向けのコンテンツはマガジン誌で発信

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この記事の著者

山田 太一(ヤマダ タイチ)

エディター、コンテンツマーケティングコンサルタント。産経新聞記者、人材採用広告会社の営業を経て、クマベイスに入社。クライアントワークにあたるとともに、コンテンツマーケティングやコンテンツ戦略の海外事例を研究する。熊本県出身。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/29 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35414

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