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MarkeZine Day 2021 Spring

D2Cブランドの要は「顧客の変身」を助けること/FABRIC TOKYOの発想と実践

D2Cブランドのキーワードは「変身」

 そもそも、D2Cとはどのようなビジネスモデルなのだろうか。D2Cは自社でオリジナルブランドを持つメーカーであり、その製品をインターネットを通じて直接顧客に販売する小売業でもある。特徴は、テクノロジーを活用して顧客と直接のコミュニケーションが取れることだ。

 「顧客との距離が近いため、ブランドのヴィジョンや魅力をダイレクトに訴求できたり、顧客データを収集することで分析・改善を行いやすかったりすることがD2Cの強みです。こうしたやり方が、小売の顧客体験を変革する一つの手段ではないかと思っています」(三嶋氏)

 直接顧客とつながることのできるD2Cでは、良い体験(UX)をつくり顧客を成功へと導くことで(カスタマーサクセス)、生涯価値(LTV)を向上させていくことが成長のカギとなる。では、顧客を成功へと導く良い体験とはどのようなものだろうか。三嶋氏は、時代が進むにつれて心地よい体験・サービスを提供する現象が生まれてきたことに言及し、その先にある「変身」こそD2Cが目指すべき提供価値だと語る。

 「ただ快適で心地よく、簡便なサービスを提供するだけではなく、お客様が描く理想の姿へと『変身』させるモノ・コトを提供することが、D2Cのあるべき姿ではないかと思います」(三嶋氏)

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実店舗が必要な本当の理由

 D2Cブランドはテクノロジーをふんだんに用いながらも、実店舗を持つ場合が多い。その理由を、三嶋氏は「店舗は、単に物を売る場所ではなく、ブランドのコンセプトを直接伝えて顧客とのエンゲージメントを深める場、理想の姿に変身してもらうための場です」と表現する。

 Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏も「Appleの伝えたいことを直接顧客に伝えられる場所があることで、Appleの価値は最大化する」と語っていた。また、マットレスを販売するCasperでは、店舗ではなくベッドを積んだトレーラーを用意し、寝心地を体感してもらう体験会を実施し、後日ECから購入するユーザーを獲得するという施策も行っている。

 ECに特化した方が賃料などのコストがかからず、収益性が高いのではないかと思われることもあるが、そうとも言い切れない。近年ネット広告の費用は高騰しており、オンライン偏重ではCPAが非常に高くなることもあり得る。オンラインとオフラインを統合して双方の強みを活かした顧客体験を創ることが、CPAを適正化し、ブランド成長速度の向上につながっていく。これが三嶋氏の考えだ。

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 なお、CPAに関する考え方として、実店舗出店のタイミングでは検索トラフィックが上がるという効果がある。実際にFABRIC TOKYOが5年前に渋谷の実店舗をオープンさせた際には、客単価が1.5倍、リピート率が2倍近くへと増える影響があった。

 「顧客とリアルの場での接点があるというのは、信頼などにつながり、CPAやLTVの面で良い影響が出ます。インターネットだけでできる顧客とのコミュニケーションには限界があるのではないかと思います」(三嶋氏)

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大手企業のD2C参入は可能か?

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/22 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35684

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