AppsFlyer Japan(以下、AppsFlyer)は3月30日、2020年下半期(7月〜12月)の世界におけるモバイル広告業界に関する調査レポート「パフォーマンスインデックス(以下、インデックス)」第12版を発表した。
サマリー
・ATTフレームワーク導入を前に、プライバシー意識とともに消費者の行動にも大きな変化
・二大メディアの存在感は変わらず。GoogleはAndroidで、FacebookはiOSでパフォーマンス向上
・ゲーム部門では、Unity Adsがトップに
ビジネスにおけるモバイルの利活用が進行する中、個人のプライバシーに対する配慮の重要性が世界的に高まっている。Appleが2021年よりユーザーの個人情報保護を目的としたフレームワーク「ATT(App Tracking Transparency)」の導入を決定し、広告識別IDであるIDFAの取得に制限をかけるのと同時に、新たにプライバシーに配慮した計測ツール「SKAdNetwork」を発表。
2020年下半期を分析したところ、このような影響が多分に見られる。2021年以降、日本における広告ビジネスは大きな転換点を迎えると考えられる。
iOSで非オーガニックインストールの割合が20%減少
同インデックスでは、すでにAppleの一連の影響が垣間見えている。その一例がiOSにおける非オーガニックインストールの割合だ。
2020年上半期と比べ、iOS上でキャンペーンを実行しているアプリの数やオーガニックインストールの割合に変化がなかったにもかかわらず、iOSにおける非オーガニックインストールの割合は20%減少した。同時期のAndroidでは非オーガニックインストールの割合が6%増加していることを考えると、非常に対照的な変化だ。
iOSで非オーガニックインストールの割合が大きく減少した主な要因は、コロナ禍を受け企業によるモバイルアプリのキャンペーン需要が急増した一方、プライバシー重視の観点から追跡型広告制限(LAT:Limit Ad Tracking)の設定を有効にするユーザーも増え、広告のターゲットの母数が減少したことにより、iOSにおいてインストールあたりのコスト(CPI)が30%高騰したことが挙げられる。
2020年はビジネス展開を進めていた既存のアプリ事業者が投資を拡大したことに加え、数々の老舗ブランドがモバイルアプリに参入。iOSユーザーが多く見られる北米や西ヨーロッパ、日本において広告の需要が急増した。
さらにLAT端末が上半期の23%から下半期32%に増加したことも受け、Androidでは10%増にとどまったCPIがiOSで急騰し、同じ広告費をかけているにもかかわらずインストール数は低下する事態となった。
結果、上位20のメディアソースのうち17以上のメディアソースが、上半期と比べてiOSのインストール数が平均25%減少しており、iOSに依存しているメディアソースほどその影響は大きいものとなった。
GoogleとFacebookの存在感は変わらず
同インデックスにおいて常に上位をキープしてきた、モバイルアプリマーケティングの大手2社であるGoogleとFacebookの戦いは、まずリテンションインデックスのパワーランキングでGoogleがFacebookとの差を広げる結果となった。
スコアでは前回の第11版(2020年上半期)で69(Google):68(Facebook)だったのに対し、今回の第12版(2020年下半期)では69:64となった。
Googleは、特にインドや発展途上国といった地域におけるAndroidの継続的な成長により、グローバル全体の非オーガニックインストールが15%上昇。一方で、北米と西ヨーロッパの地域ではAndroid、iOS合わせて大きな変化はなかった。
Facebookは、iOSのボリューム全体が減少したことを受けてグローバル全体の非オーガニックインストールも10%低下したものの、継続してiOSにおけるパワー・ボリュームランキングでトップを維持し、パフォーマンスを向上さた。
さらにFacebookは、アプリ内課金による収益化に強いメディアソースを順位付けするIAP(アプリ内課金)インデックスでも、大規模かつ高い割合で重課金ユーザーを獲得できることを証明した。リマーケティングインデックスでもFacebookが優勢であるものの、Googleも2020年下半期は、コンバージョンにおけるリマーケティングの割合が65%まで伸長した。
存在感増すUnity Ads
近年、カテゴリそのものの成長が著しいゲーム部門では、Unity Adsが競合のironSourceとAppLovinを抑え、GoogleとFacebookの二大勢力と肩を並べた。
カテゴリ別に見ると、Unity Adsはゲームカテゴリのリテンションインデックスにおいて、Googleに次ぐ世界2位にランクイン。さらに、ハイパーカジュアル、アーケード、パズル、ワードの4カテゴリでパワーランキング世界1位を獲得。
アプリ内広告による収益化に強いメディアソースを順位付けするIAA(アプリ内広告)インデックスでは、パワーランキングとボリュームランキングの両方で1位となった。
Unity Adsが躍進した背景には、アプリ内広告が主な収益源であるハイパーカジュアルのカテゴリにおいてパワーランキング世界1位を獲得し、強いポジションを維持していることが大きく影響している。
【インデックス概要】
世界各地580のメディアソース、290億件のアプリインストール、1万6,000個以上のアプリ、および600億回のアプリ起動データを収集・分析・調査したもの。
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