「そのプロダクトは革命か」
町野:当社の場合は、独自性のあるプロダクト設計をするために5つの考えがあります。

町野:1つ目は「そのプロダクトが革命か否か」の判断。大抵のサービスは既に世の中に出ているんですよね。その中で独自性って本当に難しい。だから新しいものを考えるとき、それが本当に「すごい」と言われるか、それを浸透させることで革命は起きるのかと自問自答します。
次に、「利益創出発想ではないこと」。経営者としてどうなのかはさておき、お客様からお金を巻き上げるような発想から商品やサービスを設計すると良いものができません。
我々はサブスクモデルを採用していますが、お使いいただく商品の販売価格以上は請求しない設計にしています。ある家具レンタルモデルのサブスク会社は1年半ぐらい使うと支払いが定価を超えてしまいます。一見安く始められますが、長く使うと定価の3~4倍支払うことに。利益創出的には素晴らしいですが、お客様のメリットにはなりません。
3つ目は、経営層にやり遂げる情熱があるかどうか。大事にしているビジョンや世界観をベースに事業設計するわけですが、商品検討のプロセスは多岐にわたりますし、モノはひとりでは作れません。社長という立場から考えると、副社長、同僚、プロダクト設計者、キーパーソン、取引先など様々な意見が入ってきて、最後に商品が上梓される。その過程でブランドとして大切にしたい価値観をぶれさせないことが重要ですね。
4つ目は、発想を逆転させ、他社が取り組まない領域にポジションを取りに行くこと。最後に、有識者や当該業界のトップなどを早期に巻き込むのが非常に重要だと思います。
ブランドの価値を伝える上で重要視するメッセージとその伝え方
MZ:そうして設計したプロダクト、ひいてはブランドの価値を、ターゲットへと伝える段階ではどのような戦略があるのでしょうか? 重要視するメッセージや、その伝え方について教えてください。
田邊:ブランド価値を伝える上では、自分たちのサービスのコアベネフィットをしっかり定義し、改めてベネフィットがお客様に何をもたらすのかを「日常のシーン」「未来のシーン」で表すようにしています。また、それを「トライブ(コミュニティ)×モーメント(when)」をしっかり捉えて伝えていくことを意識しています。
ベネフィットが弊社のビジョンである「自分を愛するライフスタイル(の実現)」につながっていることを、どう想起してもらうかが大切です。表現の一つひとつに現在のGREEN SPOONの価値が凝縮されていると思っています。

町野:効用、ベネフィットを一旦分解して購入者のライフスタイルに翻訳して伝えるということですよね。
我々のタグラインである「stay fearless」は、社外用と社内用を兼ねていて、あえてサービスの内容を表現せず、割と攻めたものにしています。Fearlessは「勇敢、勇気がある」という意味。自分たちを奮い立たせることにも使っていますし、社外の人に「こうしたマインドで一緒に挑戦をしていこう」と伝える意味でも使っています。また「家の中を、世界一、豊かな国へ」は、サービスが浸透したときにどのような世界になるのかを表しています。
メッセージ設計のときは、序盤はわかりやすくて攻めたものがいいです。その後どうやって浸透させるか。“浸透圧”が非常に重要です。社内、社外、株主、取引先、家具の仕入先や開発会社、広告代理店にも、我々はしっかりと事業説明をします。まずは自分の周りからです。
田邊:弊社も事業のビジョンは創業期から根気よく伝えてきました。自分の周りの人達に浸透しないのに、その先の人たちに浸透させるのは難しいですよね。