※本記事は、2021年5月25日刊行の定期誌『MarkeZine』65号に掲載したものです。
MAを導入しても成果が出ない。どこを見直す?
株式会社24-7 赤沼悠介氏
マーケティングエージェンシーで戦略の立案や制作に従事後、MAの導入支援企業にてPardotやHubspotの導入支援、BtoBマーケティングの戦略立案、オウンドメディアの運営などに携わる。2020年、24-7へ入社。MAの導入支援や企業におけるマーケティング戦略の立案を行う。
筆者はマーケティングオートメーション(以下、MA)の導入支援やマーケティング戦略に関するコンサルティングを行っており、お客様から次のようなご相談をいただくことがあります。企業の生産性アップのためにMAを入れたものの、リードを獲得できない。ナーチャリング(見込み客の育成)の成果が上がらない。なかなか成約にまで至らない……。なぜ、せっかくMAを導入して稼働させても、狙った成果を出せないのでしょうか。
重要なのは、原因を考えるときの着眼点をどこに置くかということです。たとえば「MAを導入したけれどナーチャリングの成果が上がらない」という課題を、ある企業が持っているとします。この課題に対し、私はまず「どのようにMAを使えば効果が出るのだろうか?」ではなく、「そもそも何が原因で効果が出ないのか?」と考えます。ナーチャリングできない原因はMAの活用方法が間違っているのではなく、もっと根本的な部分にあることが多いからです。
たとえばリードの数を多く集めても、その質が低ければナーチャリングの効果はさほど上がりません。また、ナーチャリングを行って営業部門にリード情報を渡しても、成約率が低ければ、それはナーチャリングの効果が出ているとはいえません。ナーチャリングはマーケティング活動全体の中の1つのセクションに過ぎないのです。リードの数や質、営業部門に渡す情報の精度をはじめ、誘導先のコンテンツ、セグメンテーションなど、ビジネスフロー内にはナーチャリングと密接に関連する要素があり、それらがうまく作用しあって初めて効果を発揮します(図表1)。
また、獲得したリードの数だけ、様々な状況の人が存在しています。製品に強い興味を持っている人もいれば、そうでもない人もいます。リードの状況は業界ごと、企業ごとにそれぞれ違っているものです。そのため、強い興味を持ったリードが多く流入する企業のMA担当者と、興味の薄いリードが多く流入する企業のMA担当者とでは、そもそも置かれた状況に大きな違いがあり、成果に大きな差が出るのは当然のことなのです。
自社のナーチャリングの効果向上を検討するとき、「MAの設定に問題はないか」という、ナーチャリングの範囲内だけに焦点を絞って考えても、大きな改善は見込めません。原因は違うところにある可能性が高いと考えることも大切です。マーケティング活動の連動性を踏まえて、関連する要素すべてに考えを巡らせテコ入れを行うことが、課題解決への突破口になります。