顧客の声を聴きながら、製品改良と「言語の変換」に没頭
そこから数ヵ月間は顧客の声を聞き、マーケットの解像度を高めながらプロダクトの改良に没頭した。CoDMONがPMFに至る上で、この期間は不可欠だった。
機能開発はもちろんのこと、小池氏が時間を費やしたのが「言語の変換」だ。サービス内で用いる言葉に加えて、マーケティング施策の中で用いる言葉についても、試行錯誤を重ねたのだという。
「たとえば『保護者満足度』という言葉は業界には似つかわしくなく、訴求軸として使わないようにしたほか、保育業務の『効率化』といった表現も控えるようにしました。この業界では保育の効率化=保育の質を下げるという印象につながりやすいので、『省力化』という言葉に変えてセールス活動やマーケティング活動をやってみる。実際にお客さまの反応を見ながら自分の発言を微調整していくというプロセスを繰り返していました」(小池氏)
上述した通り、まさにプロダクトの改良を続けていった先のタイミングでCoDMONに「補助金という時流の変化」が訪れ、事業は成長軌道に乗ることになる。そこでトリガーとなったのが、ユーザーへのヒアリングを基に「保護者の満足から保育士の業務省力化へとプロダクトの軸を変換させられたこと」と「保育園の書類業務をサービス上で管理できる機能を用意したこと」だった。
「補助金のタイミングと重なったことは幸運だったのですが、保育士の業務を省力化できることが要件だったので、結果的にはその時点でPMFがある程度完了した状態を作れていたことが大きかったと思っています。もし『連絡帳アプリ』だったら、そもそも補助対象になりませんでしたから」(小池氏)
それ以来、コドモンも“上り坂で大きな岩を押していた状態が、あるときから下り坂で岩が勝手に転がりだすようになる”というPMF前後の変化を体験する。時間帯によっては電話が止まらないような状態が続き、周囲の環境が一変した。
補助金活用をフックに、まずはイノベーター層が動き出し、検索エンジンやDM経由でも問い合わせが急増。もともとWebマーケティングの知見があり、兼ねてからSEOなど基本的な施策に取り組んできていたことも功を奏した。
現場に足を運び顧客を理解することが、本質的なニーズへの近道
メンバーが増え、組織体制が拡充されたことで若干アプローチが変わった部分はあれど、今でも現場の声に耳を傾けることを大事にしている。
たとえば月に1回ほどのペースで既存ユーザーには何らかのアンケートを実施し、プロダクトの改良点を探る。新機能については既存ユーザーへの一斉アンケートに加え、ヘビーユーザーやターゲットユーザーに対してより掘り下げたヒアリングも行う。
「マーケットのニーズを正確に掴む上では、実際に顧客の元へ足を運び、現場を観察することが欠かせません。たとえば学童保育向けに販売を強化するにあたっては、すでに関係性のある事業者さんにお願いをして現場を観察させてもらい、現場のお悩みや課題、解決の方向性についてリサーチしました。現場の先生方は指導が職業ということもあり、質問をすると快く教えていただけるというのも非常に助かっています」(小池氏)
現在CoDMONは600以上の学童保育で使われているが、その背景にはお迎え予約機能を始めとした“他の会社が対応していなかった機能”を積極的に取り入れていったことも影響している。
「必ずしも顧客自身が本質的な課題を言語化できるわけではないですし、単なる質問だけでは不十分です。自分たち自身が現場のオペレーションを理解しないことには、本質的なことは見えてこないと思うんです」(小池氏)