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僕たちのPMFの話をしようか

現場を観察し続けたから見えてきた、本質的なニーズと刺さる訴求。コドモンのPMFストーリー


 BtoBスタートアップのPMF(Product Market Fit)ストーリーを紹介する本連載。本記事で扱うのは、全国約8,000施設で活用されている保育業務支援システム「CoDMON(コドモン)」運営元のコドモンだ。保育施設からの要望を基に受託開発したシステムを発展させる形でCoDMONを立ち上げたものの、「市場から支持されない時期」も経験。そこからヒアリングを重ね、プロダクトの機能やメッセージの打ち出し方を進化させ続けたことが、後の“時流の変化”を味方につけた急成長につながったという。

製品改良を進める中でマーケットが変化し、成長軌道に

 コドモンの代表取締役を務める小池義則氏が会社を創業したのは2009年のこと(2018年11月に新設分割する形でコドモンを設立)。最初はWebシステムの企画やデザインなど受託開発を事業の軸としており、その際に顧客からの依頼で開発したのが、保育業務支援システム「CoDMON(コドモン)」の前身となる保育施設向けのシステムだ。約1年をかけて作り込んだ製品は顧客からの評価が高く、これをより洗練させてプロダクト化する形で2015年にCoDMONが誕生した。

 現在は保育園や幼稚園で働く先生と保護者がゆとりを持って子どもたちと向き合えるような支援ツールとして複数の機能群を実装。2021年4月時点で全国約8,000施設・保育士約14万人が利用するサービスに成長している。

コドモン 代表取締役 小池義則氏
コドモン 代表取締役 小池義則氏

 コドモンが急成長する最初のきっかけを掴んだのが2016年。ヒアリングを重ねながら各機能やサービス内における言葉の使い方などを改善し続けたところに、保育園がICTシステムを導入する際に補助金が支給されるようになるという「時流の変化」(小池氏)が訪れた。結果的にはこの時にPMFを達成していたことで、勢いに乗って事業を成長させることに成功。補助金が出た初年度だけで導入施設数は約400施設まで広がった。

 もっとも、そこに至るまでの道のりは決して簡単なものではなく、調整を繰り返しながらまさに“製品と市場をフィットさせる”過程が存在した。CoDMONがいかにPMFにたどり着いたか。その過程に迫っていこう。

コドモンのPMFアクション
コドモンのPMFアクション

好評価を得たシステムを製品化したはずが、思うように支持されず

 もともとCoDMONの前身となるシステムは、2種類の保育園の要望に応えるために開発された。

 1つは東京都認証保育所を複数運営する事業者の「請求周りの情報が現場でブラックボックスになっている」という課題に対するソリューションだ。すべての情報が紙で管理されているため煩雑になり、本部に上がってくる情報の正確性にも不安がある。現場に負荷をかけない形で上手く状態を可視化できないか。そんなニーズに対応する機能を作った。

 そしてもう1つが認可外保育所の「保護者に対する付加価値を提供したい」という声に対応したもの。認可外保育所は自治体などからの補助がないため、保護者からある程度高額の保育料をもらって施設を運営している。そのため「保護者はお客様」という意識が高く、自分たちを選んでもらうための付加価値を必要とされる。その一環として、自分の子どもの保育内容をしっかりと把握できる連絡機能を搭載したアプリが欲しいというリクエストが届いた。

 1年かけて作り上げたシステムは双方から評判が良く、CoDMONはこれらの機能を他の保育施設でも使えるようにクラウドサービス化。だからこそ小池氏も自信を持っていたが、蓋を開けてみると「園長先生や現場の保育士さんからはまったく支持されなかった」(小池氏)。多くの保育施設が保護者向けのアプリに興味を示さず、導入に至らないケースが続いたという。

 「世の中の保育園の大半を占めている認可保育園は、当時保護者を『お客様』としてではなく、『ご利用者』として捉えていることが多かったんです。つまり、補助も出る上に、待機児童の問題などもあって(ものすごく園児募集に力を入れなくても)園児が集まってくる。むしろ職員の採用のほうに大きな課題を感じていらっしゃったので、保護者に何らかの付加価値を提供するというよりも、まずは職員の負担を軽減したという気持ちが先行していたんです。特にPCに不慣れな方の多い業界ですので、機能のご案内を始めた途端、『保育士の負担が増えるのでこれまで通り紙で運用します』とお断りをされることも多くありました」(小池氏)

 当時からダイレクトメールなどのマーケティング活動に取り組んでいたが、反応があるのは認可外保育園ばかり。業界全体での普及を目指す上では、認可保育園の支持を得ることは不可欠だった。

 「自分自身が親目線で保護者アプリを広げたいという想いも強く、当時は『デジタル連絡帳』のようなキャッチコピーで訴求していたのですが、認可保育園からは反応がなかった。『保護者に満足していただけますよ』と伝えても関心を持たれないことが続いて、マーケットのニーズと乖離があることに気づきました」(小池氏)

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大崎 真澄(オオサキ マスミ)

ライター。大学在学中&休学中に複数のIT系スタートアップでインターンを経験後、フリーランスとして独立。DIAMOND SIGNALに関わる以前には「TechCrunch Japan」などでスタートアップ企業のプロダクトや資金調達を中心としたインタビュー・執筆活動を行っていた。4年前から長野県在住でフ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/07/19 20:32 https://markezine.jp/article/detail/36444

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