エステーのCMも、心で会話して生まれた
中村:その思いで、エステーに移られたのですね。心で会話しよう、と。
鹿毛:そうです。こんな、僕の人生に揺さぶりをかけた糸井さんのメッセージから、ばかばかしいエステーのCMができあがっているとは誰も思わないだろうけど、僕にとっては首尾一貫しているんです。雪印の最後のときと同じ姿勢で、心でお客様に向き合い、心をつかんで、ただしその表現方法をどこまでもエンターテインメントにもっていく。
中村:エステーのCMは、笑いを通してこちら側を元気づけてくれます。この歌詞も、鹿毛さんが書かれているのですよね。
鹿毛さんの本や記事を通して、鹿毛さんは無意識の部分も含めてお客様への共感力が極めて高いことに本当に感嘆していましたが、人間の闇の部分、自分の心の奥底に向き合って救われたご経験があるからこそ、「元気づける」ことをいろいろな角度でできるのですね。
鹿毛:お詫びじゃなく、今度は喜びをお届けすることに徹したわけです。でも、人を元気にするっていうのは、自分もそれによって元気になっているんだよね。だから、「こんなにおいしい仕事はない」と思っています。
特に今、コロナ禍やそれに関連するいろいろな問題の影響もあって、世の中がギスギスしていますよね。SNSもそうじゃないですか、“自主警察”が常に目を光らせていて。そんななかで、新しいCMを撮影してきました。ぜひ歌詞を聞いてもらえたらうれしい。大きなテーマを西川さんに歌い上げてもらいながら、最後は「♪今必要なのは 消臭力~」なんですが(笑)。消臭力のベネフィットは「空気を変える」ことですし、エステー自体の企業スローガンが「空気をかえよう」だから、これでいいんです。
2021年7月12日公開。
昨日の画像UPし忘れてました!「#消臭力」の新しいCMは、10年の想いを詰め込んだ玉手箱みたいな映像です♪残り90年の契約期間も引き続き、よろしくお願いします(笑) #エステー @st_cp_info pic.twitter.com/K472lJkSBE
— 西川貴教 (@TMR15) June 18, 2021
タッグを組んで10年目となる西川貴教さん。TwitterでミゲルくんのCMに言及していたことをエステーファンが鹿毛氏に知らせ、縁がつながった。西川さんとも「心と心で仕事をしている」と鹿毛氏
中村:楽しみです。先日、Facebook社内のトレーニングとして、弊社COOのシェリル・サンドバーグと組織心理学者の方とのトークセッションがありました。そのなかで「 Languishing(ラングイッシング)」という言葉がありました。要は、今の風潮はすごく疲れる状況とすごく元気な状況の間にあって、どちら側にも振れやすい。だからこそ少しでもポジティブ側に背中を押してあげることが大事だ、という話がすごく腑に落ちたのですが、鹿毛さんがされていることは、まさにそれだと思いました。
鹿毛:その話、とてもいいですね。人々のストレスに対して「そんなこと言ってる場合じゃない!」とネガで被せても仕方ないから、じゃあどうすべきか、マーケターはこれからもっと考えていかないといけない。
人は昔から変わっていないのですが、感情の強弱、アップダウンが激しくなっている。だから、そこにあるたくさんのインサイトから「どのコンシューマーインサイトとマーケティング課題を結びつけるか」を見出すのは、昔より難しくなっていると思います。
でも、自分の心、そして人の心に向き合っていけば、必ず糸口が見つかります。心のパンツを脱ぐとか、インサイトを発見するのが難しい人は、それができる人と組めばいい。心の大切さ、そして愛情と情熱の大切さを感じながら、仕事にあたってもらえるといいですね。