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MarkeZine Day 2025 Retail

小島英揮氏と考える!オンライン時代のコミュニティマーケティング

参加者の50%が半年で売上倍増!"EC版ドラゴン桜"「楽天NATIONS」のコミュニティ運営

受講者の学び合いを促進する3要素とは?

小島:良いコミュニティを維持するのに必要なことについて、渡辺さんはどう考えますか?

渡辺:次の3つの要素を大切にしてきました。

・多様性を認め、互いを尊重する
・何でも「先生」に聞かず、わかる「生徒」が教え合う
・Give First

 参加者には強い個性を持った人もいます。誹謗中傷は認めませんが、健全な「混乱」が学びを促進することも多いのも事実です。その際、互いの違いを認め合えないと、コミュニティとして成り立たなくなるので、違いを知り、尊重することを重んじています

 また、わからないことを何でもリーダー店舗に聞く受身の態度では成長できません。自分で考え、わかったことは互いに教え合うことが、自分とクラスの学びにつなげることが大事です。

 それには「Give First」、つまり、先に相手のためになることをする精神が求められます。自分が先に得ようとする人は結局うまくいきません。

小島:なるほど。そのような仕組みをどうやって築き上げてきたのでしょうか。

渡辺:限られた期間で、いかに早く本音を出し合い、助け合える関係を築けるか、常に知恵を絞っています。最初は合宿、地方訪問、飲み会など、いろいろなことを試しましたね。一見非効率ですが、そこから知見を得て、効率化していくことで、独自の形を作ることができます。

 楽天には創業期から、店舗と顔を突き合わせてコミュニケーションする文化があり、その上に、NATIONS独自の文化が築かれています。競合他社から質問があり、私たちの取り組みをお話ししたことがあるのですが、「とても真似できない」という反応でした。

日を追うごとに活性化し、熱量が広まる

小島:チャレンジ店舗が目標達成に至るまでの変化について教えて下さい。

渡辺:最初から「絶対2倍にするぞ」と意気込む人は、実はあまり多くありません。

 平日は毎日、クラスごとのFacebookグループに日報として、その日の売上、サイト訪問者数から購入に至る転換率、単価、それぞれの実数と伸び率、そしてフリーコメントを報告してもらいます。フリーコメントは最初は簡素なのですが、日を追うごとに具体的な悩みや課題の共有が増えてきます。コミュニケーションは頻度と質が重要で、そうした投稿の量が、そのクラスがうまくいっているかの目安になります。情報や課題を共有すれば、他の人からも情報が返ってきて、クラス全体の学びにつながるのです。チャレンジ店舗の中にもリーダー的な動きをする人が出てくるので、そういう人とも連携して、クラスを活性化します。

 折り返しくらいで、リーダー店舗も事務局も、自分のために一生懸命にやってくれていることに気づきます。日報などから他のメンバーの真剣さも伝わり、目標を達成する人が出てくると、自分も負けていられないと、クラス全体に熱が広まります。

 卒業式では、チャレンジ店舗、リーダー店舗、事務局ともに、大の大人が皆涙を流します。ただの勉強会ではこうはいかないのではないでしょうか。

小島:達成した人とそうでない人の溝はできませんか。

渡辺:参加者には、半年で売上2倍というゴールはあくまで通過点で、50年後、100年後にどうありたいかを考えてほしいと伝えています。達成できたかどうかより、目標を実現するための努力の中で得たものが、その先に役立つからです。

 NATIONSでは、一生懸命努力することや、交流の場を盛り上げることも、貢献とみなされ、尊重されます。卒業後に倍増を達成して、自主的に報告する店舗も多いです。卒業後の目標達成も報告も義務ではありませんし、謝礼も発生しないにもかかわらずです。もちろん、全員が心から祝福をしてくれます。

 各クラスのFacebookグループは卒業後も残し、継続的に活用してもらいます。日報を引き続き実施するかなど、細かな運用は各クラスの判断に委ねられます。事務局も常にやりとりを見て、定期的にコミュニケーションの機会を提供し、クラスの熱量が下がらないようにしています。

成果課金型を採用した理由

小島:冒頭のお話に戻りますが、受講料について、無料でも、定額でもなく、成果課金型にした理由をお聞かせ下さい。

渡辺:皆が「半年で売上2倍」という共通目標に向けて一丸となるためです。仮に月商が100万円から200万円になったところで、チャレンジ店舗からの成果報酬は100万円の7%ですから7万円、楽天は2%です。お金だけで考えれば、リーダー店舗に割いていただいた時間や手間を考えると、見合うものではありません。

 無料だと、教える側も学ぶ側も本気度が下がります。楽天としても、プロフェッショナルとしての仕事には対価をいただくべきと考えています。また固定報酬にすると、学ぶ側は対価を払ったのだから何か教えてもらいたいと思うでしょうし、教える側も報酬が目的になる可能性があります。

小島:なるほど。報酬は単なるインセインティブではなく、コミットメントの証として設定しているのですね。そしてリーダー店舗は、報酬以外の動機で活動に参加しているのでしょう。

渡辺:はい。人に教えること自体学びになりますし、人に言う分自分もやらねばというプレッシャーにもなるのだと思います。実際、リーダー側の売上が伸びることも多いのです。楽天の成長によって今の自分があるとの思いから、「恩送りのために」と引き受けてくれる人も少なくありません

 このプログラムでは、リーダー店舗と事務局とチャレンジ店舗とは対等の関係と考えるので、どのようにするかはリーダー店舗に考えていただいています。楽天からリーダー店舗には、講義に参加する、日報を見るといった最低限のことしかお願いしていません。

 にもかかわらず、ほとんどのリーダー店舗は、Facebook上の日報や投稿に対して丁寧にコメントします。「現場を見ないと課題がわからないから」と、チャレンジ店舗の現場を見に行くリーダー店舗も少なくありません。

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メンバー募集時の合意形成、期待値の調整は丁寧に

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この記事の著者

高橋 龍征(タカハシ タツユキ)

conecuri合同会社 代表社員

CSK(現SCSK)で営業、経営企画に従事後MBAを取得し、ソニー、サムスン電子での事業開発マネジャーやテック企業の共同創業を経て独立。14年を超える複数のコミュニティ運営を通じて、セミナーや研修の企画に携わり、年間200セミナーを形にした他、コミュニティ構築支援などに複業の幅を広げ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/22 08:30 https://markezine.jp/article/detail/36578

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