※本記事は、2021年7月25日刊行の定期誌『MarkeZine』67号に掲載したものです。
電通アイソバーとの合併でより大規模な支援を実現
株式会社電通デジタル 代表取締役社長 執行役員
川上宗一(かわかみ・そういち)氏1998年東京大学法学部卒、電通入社。マーケティングプロモーション局、営業局に所属し、食品/エンターテインメント/自動車/消費財/情報通信企業を担当。新商品・新事業開発、手口ニュートラルなコミュニケーションデザイン、音楽・映像・アニメ・テクノロジーを活用したコンテンツマーケティングを推進。2019年から電通デジタルに参画。人を基点としたデータドリブンマーケティング「People Driven Marketing」を推進。執行役員兼アカウントプランニング部門長、アドバンストクリエーティブセンター長を経て、2020年より代表取締役社長執行役員に就任。
――川上さんは、20年以上電通に勤められたのちに2019年から電通デジタルに参画、翌年に社長になられています。激動のタイミングでのご就任で、予想外のことも多かったのではないでしょうか。
予想できないことばかりでしたね。当社だけでなく国内外含めて世の中全体が、大変な状況に陥った年でした。いち生活者としての我々のライフスタイルも一変しました。
数年前から必要性が求められてきたDXも、10年分の変化が1年で起きた感覚です。リアルチャネルでの接触が大きく制約されたことで、企業は顧客とどう接するべきか、根本的な見直しが求められています。そのため従来の「業務効率化のためのDX」から、「顧客体験を刷新するためのDX」へ、その焦点もシフトしています。従来のままでは、企業の存続も、パートナーや社員との関係構築も難しくなる。その難しさが顕在化し、皆が知恵を絞り始めた年だったと思います。
――そんな1年を経て先日、電通デジタルと電通アイソバーが合併し、新生・電通デジタルが誕生しました。ちょうど7月で5周年を迎えられますが、まず統合の目的をうかがえますか?
クライアント企業に対して、より大規模で本質的な支援をしていくことが最大の目的です。加えて、電通グループとして、デジタル支援事業をさらに強化することもあります。
まず1つ目は、やはりコロナ禍のインパクトと無縁ではありません。多くのクライアント企業で、「この時期をどうサバイブするか」とDXに対する真剣度が増し、電通デジタルに対して、デジタルを使ったマーケティング革新を進めたいという要望が急増しました。
同様に電通アイソバーでも、CXを軸とする課題解決への相談や依頼、また対応スピードへの要求が増し、電通デジタルと協業する局面が増えていました。それなら一体となるほうが、各社の課題に対してより守備範囲を広く、また深く提案できますし、窓口が一本化することもクライアントのメリットになる。そう考え、意思決定しました。2,000人の体制で、計1,000社に精一杯対応し、もちろんまだお応えできていない企業のパートナーにもなれるよう尽力していきます。
2つ目についてですが、電通グループとしては、過去120年にわたり本当に多種多様なクライアントに向き合ってきた歴史があります。事業戦略やマーケティング戦略を立案し、マスからデジタル、店頭などあらゆる接点で企業と生活者を結んできました。そして今、社会構造全体でデジタルが前提になりつつある中、これまで以上にデジタル領域のケーパビリティを強化することが、マーケティング支援のアップデートには不可欠です。その点に思い切り舵を切った、電通グループの構造改革の象徴的な事柄が、今回の合併でもありました。