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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

新生・電通デジタルがけん引する顧客起点でのDXの形

デジマ支援、システム構築、DXの3要素を連動

――両社ともデジタル専業会社でありながら、得意領域は異なっていると思います。それが統合による守備範囲の拡大につながっているわけですが、両社の強みをどうご覧になっていますか?

 電通デジタルは、設立当初から「広告からCRMまでフルファネルで」「戦略・施策・システムをフルレイヤーで」提供する、統合ソリューションを志向してきました。一方、電通アイソバーはグローバルのデジタルエージェンシーであるIsobarの強みを継承し、CX領域の支援に注力してきました。また、コマース構築にも長けています。

 これらが一社に収まることで、幅広いソリューションの専門性と統合力に、その専門性のひとつとしてCXデザインの機能が高まりました。つまり、新たな顧客体験の創出に対して、より先進的で付加価値の高いソリューションを提供できるようになります。コンサルティングに留まらず、実装までやり抜く、その点に大きなシナジーがあると考えています。電通アイソバーのクライアントには、これまでのSalesforceやAdobe、LINEに加えて、今後はGoogle、Yahoo!、Twitter、Facebook、Rakuten、Amazonのようなメガプラットフォーマーと組んで新しいチャレンジがしやすくなる、という利点もあると思います。

――MarkeZineではたびたび御社を取材してきましたが、提供サービスとして「デジタルマーケティング支援」「その実現のためのシステム構築やデータ利活用」「DX」の3つが中心だと認識しています。3つの比重や、優先順位などは今後どうなりますか?

 3本柱の中で、優先順位はつけていません。クライアントの個々の課題によって、どの切り口から入ってもいいと思っています。マーケティングがマスメディア偏重になっているならデジタルを強化しますし、顧客理解の推進ならデータ利活用の実践がメインになるかもしれません。

 大事なのは、3つがばらばらではなく有機的に連動し、全体をひとつの運動体として推進できることです。体内の血の巡りが滞らず、心臓も肺も腎臓も問題なく健全に機能するようなイメージですね。

――DX支援を打ち出す企業が多いので、御社もその点を打ち出されるかと思ったのですが、有機的な連動が重要だということですね。

 DXという言葉が一般化し、経営層から情報システム部門の方まで「DXしなければ」という意識はとても高まっていると感じます。その点では「DXを軸とするマーケティング」はクライアントとの共通言語としては有効です。ただ、どんな言葉もそうですが、実践がともなわなければ意味がない。実践のためには「御社にとってのDXって何ですか」と、どんどん深掘りしていく必要があります。

 丁寧に会話していくと、経営層が目指していること、事業部が実現したいこと、情シス部門が描いていることがそれぞれ違っているとよくわかります。DXを起点に話すと、これらをひも解きやすくなるという実感はあります。

顧客だけでなく、社員の気持ちも起点にする

――組織がサイロ化し、システムを入れても機能しない、運用できないという声は多く聞きます。

 我々もその課題にずっと向き合ってきました。各部署の論理があるので、話がかみ合わず、経営が目指す変革が進まない状態が続いています。クライアント社内の部門を超えた統合も、我々はご支援していると思っています。

 ソリューションやツールの導入支援もしますが、そもそもそれらは手段であり、導入はゴールではなくスタートですよね。構想の全体像は描けていても、本当はそこから零れ落ちている、人間の感情こそ大事だと思います。具体的には、実際にお客様と接する営業担当者の気持ちや、顧客の気持ちですね。そうした気持ちに寄り添い、DXをしっかりと実のあるものにすることが、当社が目指すことです。

――その実行部分についてうかがいます。電通グループでは以前から、人を起点にしたマーケティングの実践を打ち出されています。とはいえ、先ほどの組織のサイロ化を含めて、これまでの事業運営の仕方が定着しているクライアント企業に顧客を起点とする思想や実践を浸透させるのは、とても難しいことだと思います。どう推進されているのですか?

 いくつかありますが、まず「生活者の視点に立つ」こと自体は、電通が120年続けてきていることです。ただ意見を聞くのではなく、本当にどう感じているのか、それを捉える技術の蓄積があります。昨今だとソーシャルリスニングを非常に重視していて、そこで捉えた声をクライアント内に展開しています。顧客と身近でない部署も含めて、生の意見を皆で共有しながら、それぞれの持ち場で今日の打ち手、明日の打ち手を考えることが大事です。

 また、電通デジタルと電通が提供している、DX推進企業に対して事業全体のDX課題を抽出・数値化する「Dentsu Digital Transformation診断」も、各部門がなぜ一体となれないのか、ボトルネックがどこにあるかを特定して社内を一体とさせる助けになります。各部門の論理が可視化されると、それらの連動で顧客に貢献していることがよくわかります。

 その点では「顧客起点」という言葉は、顧客の前にむしろ社員を対象にすることがカギなのかもしれないですね。社員の方々が、デジタルをちゃんと自社の事業成長のために使えるようにならないと、本当に絵に描いた餅で終わってしまう。同時に、デジタル活用が目的ではなく、皆で進める仕事の積み重ねで顧客への価値が生まれていると理解することも大事だと思います。

次のページ
顧客起点でのDXとは顧客と社員のための変革

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

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2021/07/26 06:30 https://markezine.jp/article/detail/36748

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