※本記事は、2021年7月25日刊行の定期誌『MarkeZine』67号に掲載したものです。
以下6名の方からコメントをいただきました。
合同会社 DMM.com 武井慎吾氏/日本航空株式会社 山名敏雄氏/株式会社 LIFULL 樋口貴成氏/サイボウズ株式会社 大槻幸夫氏/スリーエム ジャパン株式会社 田中訓氏/株式会社ユーザベース 酒居潤平氏
「タスクプロセス」と「メンテナンスプロセス」の両軸で進める、組織マネジメント(DMM.com)
環境変化に素早く対応できた3つの理由
私たちマーケティング部は、DMM.comグループが展開する50を超える各事業に対し、収益貢献をミッションとしてマーケティング活動に従事しており、現在は再現性高く効率的な人員配置とマネジメント観点から「手段・機能別」のチーム体制で運営を行っております。コロナ禍における組織マネジメントについて、「タスクプロセス」と「メンテナンスプロセス」、そして「アフターコロナ」の観点でご紹介したいと思います。
まず「タスクプロセス」の観点では、大きな混乱もなく組織・個人ともに早々にコロナ禍の環境にアジャストすることができました。これには大きく3つの理由があります。1つ目は、組織の目標管理方法として「OKR」を以前から導入しており、組織および個人の方向性とタスク(ロール)を明確化・共有化できていたこと。2つ目は、組織形態を「自律型組織」として構築しているので、環境の変化に対し各々の判断で物事を進めることができたこと。3つ目は、DMM.comグループ内でのコミュニケーション手段として、オンラインの手段もコロナ以前より活用していたので、リモート環境への移行に組織・個人ともに早々に対応することができたこと。結果的にではありますが、これらコロナ以前から取り組んでいた組織マネジメントが功を奏しました。
一方「メンテナンスプロセス」の観点では、「心理的安全性の高いチームづくり」を目指して改善に取り組んでいます。心理的安全性に関わる要素として、「存在感」と「雑談」はとても影響が強いと考えます。これら要素はオフィスでは当たり前のように存在していましたが、リモートでは存在しにくい要素ですので、これらの要素を存在させるためのコミュニケーション設計を行い、仕組みを導入してトライアルを行っています。実際にトライアルを行い定着した例としては、以下が挙げられます。
- 雑談を促す会議体や連絡グループの設定
- OKR内に「チーム間連携の項目」を指標として追加
- 教育およびコミュニケーション醸成のためにマーケティング学習アプリ「コラーニングアプリ」を導入
アフターコロナは「働き方の多様性」に注視
アフターコロナの組織マネジメントの観点では、特に「働き方の多様性」に注視したいと考えます。DMM.comでは副業を許可していますが、世の中のデジタルシフトがさらに進み、場所と時間に囚われず生産的な働き方を実現できる環境が整っていった先で、「コロナ」という心理的不安が払拭されれば、副業も含め「働き方」に対しての要望が増えてくると想定しています。その要望を汲んだ上で、より柔軟にマネジメントを行う必要があるので、今から対応策などを議論・検討していきたいと思います。
合同会社DMM.com マーケティング部部長 武井慎吾氏
グループ会社との連携で内製化を推進コスト削減とスキルアップを目指す(日本航空)
会えないからこそ、直接のコミュニケーションを
チームメンバーの安全を最優先とし、2020年2月下旬より原則テレワークに切り替えました。JALはCOVID-19の影響を受ける前から社員の働き方改革推進の一環として、テレワークを行うためのインフラ整備(社内システムへのリモートログイン、共有ストレージ、PC、スマートフォン、ZoomIDの貸与など)はすでに終了していたので、混乱もなくスムーズに切り替えができました。しかしながら、今までの働き方ががらっと変わってしまうことによるメンバーのメンタルストレスのケアについては注意を払うことが重要だと考えました。
私は必ず毎日1回チーム全員で、たとえ30分でもZoomで集まって会話するなど、社会とつながっていることをメンバーに意識させるような工夫をしました。また、今まではメールだけですませていた連絡もあえて電話で話すなど、仕事の効率ではなく、メンバーと直接コミュニケーションをとることを重視しました。
内製化によりコスト削減とスキルアップを目指す
コロナ禍で航空業界の需要は激減しましたが、JALでは社会インフラとして運航を継続するために、できるかぎりコストを抑える工夫を全社で実施しています。その中で、私のチームでは内製化を進めていきました。グループ会社であるJALブランドコミュニケーション(JBC)に、以前よりSNSチームを立ち上げていましたので、今回このチームの拡充を図り、SNS運用の大半をこのチームとともに実施できるような体制を作りました。JBCはグループ会社ですので、役務費の支払いは発生しますが、連結決算対象であるためJALグループ外への費用支払いは抑制できるメリットがあります。
私のチームメンバーは専門職採用ではないため数年の周期で異動があり、メンバーの入れ替わりが発生します。後任への引継ぎ期間は1〜2週間しかありませんので、知見をすべて後任に引継ぐには時間が足りません。一方、JBCはWeb関係、SNS関係の業務を行う人材が豊富におり、内製化=JBCへ知見をためていくことにもつながります。したがって私のチームメンバーの入れ替わりが発生しても最初はJBCのメンバーに業務を教えてもらいながら、新メンバーは徐々にスキルアップを図っていくことができるメリットがあると考えています。
日本航空株式会社 広報部 Webコミュニケーショングループ長 山名敏雄氏