「チームビジョン×KPIマネジメント」でチームのモチベーションを維持(LIFULL)
私は店舗を中心に、ZoomやLINEなど、様々なチャネルを使って、住まい探しや家づくりについて専属アドバイザーに無料で相談できるサービス「LIFULLHOME'S住まいの窓口」のマーケティングを担当しています。
コロナ前は店舗相談が大半でしたが、コロナ禍でオンライン相談への集客を強化したことにより、緊急事態宣言下で店舗がクローズしてもコロナ前の集客数を上回り、過去最高の集客実績を更新することができています。前職含めリアル店舗のマーケティングを長年担当してきましたが、集客先も職場環境もオンラインのみの環境は初めての経験です。
私自身、LIFULLに入社したのは2020年の3月。直接顔を合わすことのないメンバーや関係者と前例のない施策を進めるうえで、上手くいかないことも多々あり、今も試行錯誤を繰り返している最中ですが、そんな環境下においてチームで仕事を進めるうえで、注力したことが2つあります。
1、チームビジョンを議論の中心に据える
LIFULLは元々会社全体でビジョンを中心とした行動が最重要であるとしており、チーム単位でもビジョンを定めています。このチームビジョンをただのスローガンとして捉えるのではなく、個々の業務が分離される状況下で、全員が目指している状態を明確にしたいと思いました。不動産はお客様の検討期間が長い商材にも関わらず、企業側が行うマーケティング施策は短期的な集客効率だけに目が行きがちです。それでは施策の幅が狭まり、市況の変化に適応できなくなってしまいます。そこで「チームで目指しているのはお客様の状況に合わせた最適なコミュニケーションの実現である」という点を中心に議論を進め、あらゆる場面でチームの羅針盤となるようなビジョンを言語化していきました。
2、KPIマネジメントの実践
KPIについても、何度もメンバーと議論しました。もちろん事業としての売上目標はありますが、達成するために必要な変数を細かく分解しました。それを全員で見ながら話し合い、最終的にはチーム全員が日々結果を見て一喜一憂でき、PDCAが回しやすい数値をKPIに設定しました。また、そのKPI達成に向けて各プロジェクトや担当業務ごとに個別のKPIをブレイクダウンしていったので、個々の取り組みが全体の目標達成につながっているという一体感を持って仕事を進めることができています。
「チームビジョン×KPIマネジメント」を重点的に行った結果、全社員向けのES調査(従業員満足度調査)において、私のチームはコロナ前と比較してもモチベーションが高まっているという結果を定量的に出すことができました。リモート下でもチームのモチベーションを高く維持できたことが、施策の打席数や打率を高め、結果として上述の高い集客実績を出すことにつながったと実感しています。

株式会社LIFULL LIFULL HOME'S事業本部
マーケティングコミュニケーション部
メディアコミュニケーションユニット OMO
統括グループ長 樋口貴成氏
アイデアや雑談が飛び交う「立ち話」の場をオンライン上で作る(サイボウズ)
コロナ禍でコミュニケーションが進化
チームだけでなくサイボウズ全体として「kintone」など自社クラウドサービスを活用していることもあり、元々業務はオンラインシフトしていたので、コロナ禍においても大きく影響を受けることはありませんでした。しかし、そんなサイボウズでもコロナ禍によってさらなる進化がありました。それはコミュニケーションにおける進化です。
それまではオンラインでも働けるといえども、やはりどうしても出社している人たちのほうが優先され、リモート側はおまけという立場になりがちでした。たとえばある施策の立案において、出社している人たちの立ち話で生まれたアイデアがそのまま採用され、出社していない人にはその経緯が見えづらくなってしまったり。企画を検討するためには、チーム内の雑談も含めたコミュニケーション量や密度が非常に重要であるため、新しいPR施策を考える上で物理的に出社できないことは、仕事の進捗に大きな影響を与える恐れがありました。
しかし、コロナ禍を機に東京オフィスは出社率10%前後とほぼ全員オンラインになったことで、kintoneがそういった立ち話的なコミュニケーションも含めたオンラインオフィスの場へと変貌を遂げました。
「分報」によりアイデアや雑談が飛び交うように
具体的には「分報」と呼ばれる社内Twitterのような取り組みが一気に広がり、離れて働いていても、お互いがいま何をしているかわかる雰囲気が生まれました。これにより、社内のコメント書き込み量はコロナ禍前の5倍に増えました。施策についてのWeb会議をしつつ、その後は個人個人がそれぞれのタイミングでさらに施策について思考を深める過程を「つぶやく」スタイルです。時には仕事を離れた雑談ネタも多く飛び交います。これがオンラインで可視化されたことで、電話やWeb会議でつながっていなくても、どんどん施策検討が進むようになりました。

わかりやすい例で言うと、2020年に実施した「がんばるな、ニッポン。」メッセージ企画です。この新聞広告およびテレビCMは大きな反響を呼び、サイボウズの認知度を大きく向上させました。コロナ禍の状況でスピード感を保ちつつ、極めて繊細なメッセージについて熟慮でき、様々な改善案を出せたのも、このオンラインオフィスでのつぶやきがあってこそでした。そうでなければ、チームとしての一体感が損なわれ、ここまでの成果に結びついたかどうかは怪しいです。

サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部長/サイボウズ式ブックス編集長/
取締役 大槻幸夫氏