脱コモディティ化を図る一手となるか?
高山:本日はサービス・ドミナント・ロジックについて、一橋ビジネススクールの藤川准教授をお招きしています。コモディティ化に課題をもっているマスプロダクトのマーケティング担当者は多くいらっしゃいますが、その一つの解決策として、サービス・ドミナント・ロジックの考え方を紹介できればと思います。
藤川:サービス・ドミナント・ロジックは2000年代半ばにマーケティング分野で始まった議論です。サービスの観点から経済社会をとらえようという世界観を指します。サービス・ドミナント・ロジックの比較対象として、グッズ・ドミナント・ロジックという考え方があります。「モノ」の生産や販売、消費などの活動を中心に経済や経営をとらえる世界観といえます。
この両者の違いを説明するときには、大きく3つの違いに焦点を当てて説明しています。
誰が誰といつどのように価値をつくっていると考えるかで世界の見え方は大きく変わる
藤川:まず一点目。それはサービスのとらえ方の違いです。ここではグッズ・ドミナント・ロジックを「レンズ1」と呼び、サービス・ドミナント・ロジックを「レンズ2」と呼んでいきます。
レンズ1では、世の中はモノが中心で動いているととらえます。何か経済活動が起きるときには、まず、モノが生産されて販売され、そして、購買されて消費されると考えます。
そのうえで、モノとして定義できない対象をサービスととらえます。つまりモノとサービス(モノ以外の何か)を分けるのが、グッズ・ドミナント・ロジックの一つの特徴です。
藤川:サービス・ドミナント・ロジックは、モノとサービスを分けるという発想自体をやめにしませんか、というところから始まっています。
たとえば、第一次産業と第二次産業はモノ、第三次産業はサービス(モノ以外)といったように、モノとサービスを分けようとするのではなく、サービスをもっと広く定義すれば、あらゆる経済活動をサービスの視点からとらえることができませんか? サービスを「他者あるいは自身の便益のために、行動やプロセス、パフォーマンスを通じて、自らの能力(知識やスキル)を活用すること」と広く定義して、すべてをサービスの観点からとらえようとする世界観が、レンズ2のサービス・ドミナント・ロジックです。