自社にとって「いい顧客」とは?社内で共通認識が作れているか
現状の理解が進んだら、2つ目のポイントとなる施策検討の段階に移っていく。売上を上げるためには、施策を通して顧客の態度変容を起こしていかなくてはならないが、藤原氏は顧客育成のステップを意識することが大切と説く。
最初のポイントは、属性データや行動データの分析を通じて、自社にとっての「いい顧客」を定義する部分にある。ブランドやビジネスモデル、顧客セグメントによっても定義は異なるため、社内で共通認識を持っておくことが大切だ。
「いい顧客とはどんな顧客か」を定義できれば、彼らの最初の購入金額や商品傾向をデータから分析し、いい顧客になってくれる可能性の高い新規顧客を獲得するために必要なことが見えてくる。
たとえば、「一見ユーザー」を「ライトユーザーの中でのいい顧客」に引き上げたいとして分析したところ、商品Aを買った一見ユーザーがライトユーザーになりやすい傾向がわかったとする。その場合はまだ商品Aを買っていない一見ユーザーに商品情報を送ることで購買を喚起していくというように、逆算する形で施策を展開していくことが可能になる。
これを突き詰めていくことで、ライトユーザーをヘビーユーザー、最終的にファンといったブランドの支持者に育成することを考えるようになるだろう。しかしそこに至るには行動データから得られる情報だけでは難しい。「今お客様がどんな状態にあって、ブランドやサービスに対する熱量がいかほどかを知るためにも、アンケートなどで満足度を把握しておくことが必要だ」と藤原氏は言う。
「もし最後に買った商品の満足度が低ければ、このお客様にどんなメールを送っても良い反応は得られないでしょう。その場合はその方をセグメントして、アフターフォローする内容のメールに変えるというように、またステップを分けることが大事です。
このように、いい顧客を定義・分析して顧客を育成するまでの一連のシナリオができてくると、再び新規のお客様を獲得する入り口に戻った時、獲得にかけるリソースや流入経路にも新しい発見が出てくると思います。それをぐるぐる繰り返しつつ、現在多くの企業が導入しているマーケティングオートメーション(以下、MA)やCRMツールのシナリオづくりに有効活用してほしいと思います」(藤原氏)
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MAシナリオ作りは超重要。外部パートナーとチームで行おう
ここまでの顧客育成ステップに沿って、どうデータをMAシナリオに落とし込むのか。藤原氏は3ステップでシナリオを策定するやり方を紹介してくれた。具体的には、ターゲット層を理解して売上をつくる顧客層を絞り込み、併売商品ランキングの高い組み合わせをどんどん提案することで売上を積み重ねる、ターゲットと商品を決めた上で必要に応じてセールを活用するといったやり方だ。
「しんどい時ほど、売れないモノを何とかして売ろうとしてしまうことが多いものですが、ECの王道は、ロングセラーの商品をしっかりと売っていくことです。売れる商品を1つでも多く売ることにリソースを使う。その上でアップセルや併売目的で、売っていきたい商品も提案する。そのコミュニケーションの順番を間違わないようにすることで、効果的なMAシナリオができてきます」(藤原氏)
また、事業を担当するマーケターがシナリオ作りに入っていく姿勢も重要だと指摘する。外部パートナーにMA運用を委託している場合でも、自分たちの顧客を一番よく知っている立場としてシナリオづくりに責任を持ち、その上で取り込むべき他社のノウハウがあれば取り込んでいく。チームとして切磋琢磨する姿勢を大事にしてほしいと伝える。
「(3)売上アップを実現する組織とは?」では、3ステップで自社の組織づくり・外部パートナーとの協働のポイントを紹介。動画本編【32:31~】で語られた内容を、少しだけお見せします!
ステップ1:デジタルマーケティングの基本とロジックの理解・共感
ステップ2:戦略スピードを上げる「組織」、実施スピードを上げる「体制」「役割分担」をつくる
ステップ3:質を上げる「パートナー」とチームをつくる