店舗スタッフにもDXの目的と未来を伝える
塚原:新しいシステムを導入するとなると、アルバイトさんも今までに経験のない作業が増えますよね。そのような新しい試みをしながらも、鳥玉さんは店舗ごとには社員スタッフを配置しない形態を目指していると伺いました。それもすごいですよね。
須山:今は各店舗に社員がいますが、オペレーションとマネジメントの完成度を高め、将来的には現場での社員数を減らすことを目指しています。
塚原:アルバイトスタッフさんの接客も良い店舗体験・ブランド体験の肝になっていくと思うのですが、そのあたりはどのようにコントロールを?
須山:ツールの導入を踏まえたオペレーションの研修をしています。また、スタッフの理解形成を生むためには、入口と出口をしっかり伝えてあげることが一番大事だと考えています。
「こういう目的で、このツールを導入します。100%運用できるようになったら、こういう未来が待っています」と方針を明確に伝えます。これを知っているか否かで、トラブルが起きたときの対応や考え方も変わると思います。「もうこのツールは使わないほうがいいんじゃないか」という声になるか、「じゃあ、どうしようか」と解決方法を前向きに考えてくれるか。この差は大きいです。
また社員数を絞ったオペレーションでも充実したサービスを提供するために、1時間100食の提供を目標にしています。提供が早すぎてもお店がパンクしますし、遅すぎると満足度が低下するので、丁度いい速度にする必要があるのです。
これを実現するために、AI搭載カメラを設置して提供スピードなどを測っています。この点も伝え方が大切で、スタッフの監視や干渉の目的ではなく、目標の数値や、その先には店舗がスムーズに回って、お客様にも満足してもらう姿を見据えていることを理解してもらっています。
目指すのはフラットな組織
須山:現場から意見が出て、私たちもそれを反映できるフラットな組織作りも目指しています。社員に依存しない店舗を作るために、たとえば、優秀で頼りになるアルバイトスタッフには役割を与えて、店舗合同のリモート会議に参加をしてもらっています。彼らは意見を言ってくれますし、私たちの課題感をきちんと伝えられていると感じます。店舗の雰囲気や成績はみんなで作っていくもの、という意識を少しずつ広げていければと考えています。
塚原:店舗を持つ企業にとってアルバイトさんの育成は大きな課題だと思います。企業が目指しているものを伝えて、当事者意識を感じてもらう取り組みは、やろうと思っても簡単にできることではないですよね。ミーティングの場に社員と同等に出てもらうなどは、とてもいいですね。
やはり最終的に顧客と直接コミュニケーションをとるのは、アルバイトさんたちですから。そこでの体験が良ければ次の来店にもつながると思います。良いイメージを持っていただくにはスタッフさんが重要ですよね。今後、デジタル化が進むと店舗スタッフも減ってくると考えられます。その時に人がいる価値は、ちょっとした温かみだったり親切だったり、ストレスを感じさせないことだったりだと思います。それが実現できるアルバイトや組織を作れるか、ひとつ重要ですよね。