テクノロジー活用を支える「人材の重要性」
続いて、討論の話題は「テクノロジー」へ。マーケティングのあらゆる局面でデータと向き合う必要がある今、テクノロジーの活用は企業にとって絶対条件だ。そして、「これをクリアするためのカギは?」と問うと、「人材」に行き着くようだ。
山口:ブランドアウェアネスにしても、ターゲットであるお客様のエンゲージメントにしても、今の世界は“データ”なんですよね。データで追っかけて、データで分析してウォッチしていかなければならない。そうなると、テクノロジーが非常に重要です。データ、IT、テクノロジーをオーケストレーティングしていかなければいけないわけですが、これがどんどん難しくなっています。私もマーケティング職を25年以上やっていますが、とても幅広くなっていますね。
庭山:欧米のマーケティングの現場では、10年前は良いデータのことを「Sophisticate」、いわゆる「洗練されたデータ」と呼んでいました。これがここ5年くらいで、「Hygiene」に変わっています。Hygieneというのは、健全であるという意味です。厳しくなっている法体制に耐えられるか、しっかりパーミッションが取れているのか、といったことが求められるようになっていて、その意味でSophisticateではもうダメなんですね。このHygieneデータの管理には、山口さんがおっしゃったように、テクノロジーが絶対的に重要です。
古森:データ管理におけるテクノロジーの活用について、アドバイスはありますか?
庭山:データの一元管理は、実はもう外部連携とテクノロジーを使わない限り、どうにもならないと思っています。テクノロジーを使って、外部データと連携をして、データのHygieneな部分をいかに守っていくかを考えることが重要です。これを行うには社内に専門部署がなければいけません。
ポイントは、少なくともデータマネジメントの部署は人事のローテーションから外すこと。3~4年かけて育った人間がローテーションでいなくなって、また素人が来る……というような状況では、データを守れません。私はローテーションが不可避なら、全部アウトソーシングしてほしいと話します。
山口:マーケティングの業務が幅広く・深くなって、さらにIT部門などとも連携していかなければいけないとなると、本当に人材が肝なんですよね。社内でパフォーマンスを出せるマーケティング組織を作るためには、社内の各カウンターのパートナーとして会話ができるくらいの機能とケイパビリティを持たせる必要があります。つまり、いかにプロフェッショナルな人材を持てるかということになるんです。
私も、マーケティング組織の改革をしている真っ最中です。キーパーソンやプロフェッショナル人材は外から迎え入れたりしながら、組織全体の知識レベルを上げていく、ということをとても苦労しながらやっています。やはり、そうしないと人材は育ちません。
古森:人材を育てる上でのキーとなるポイントは何でしょうか?
山口:私は、カルチャーだと思います。組織は、人材の入り混じりですので、多様性がとても重要です。いろんな人たちと融合しながら、一緒に同じほうを向いて、きちんと結果を出す。そのために、一人ひとりをリスペクトしながら、繋がっていく。そういうカルチャーが社内にないと、新しいチャレンジをしても、能力のある人材を迎え入れても融合できません。
そして、このカルチャーを作るのはやはりリーダーなんですよね。私が今一番重要視してチャレンジしているのも、まさにカルチャー改革です。マーケティング部門だけでなく、全社をあげてカルチャー改革をしています。