DXを阻む原因は「経営層のリーダーシップ」にある
ここから討論は本題の「マーケティング&セールスのDXを阻むもの」へと続いた。この日は、「経営層のリーダーシップ」「テクノロジーの活用」「人材育成」の3つの観点から討論が繰り広げられた。
庭山:マーケティングが必要な時代にいきなり突入したので、経営者も含めて、誰もマーケティングをしたことがない、体系的に学んだことがない、そしてマーケティングのブレーンがいないというのが今の日本です。だからこそ、社内で連携してマーケティングに取り組まなければいけないのですが、そもそもマーケティングという言葉の定義すら、営業や広報など部門ごとに違っているために収集がつかない。私は、部門間の連携ができない原因は経営層のリーダーシップにあると思っています。経営層がリーダーシップをもって、「我々はマーケティングオリエンテッドな会社に生まれ変わるんだ」と率いていかないと、絶対に連携はできません。
山口:マーケティングそのものの定義が企業や組織によってバラバラであるために、本来は“繋ぐ”ためにあるITツールも部門間でバラバラだったりします。そうなると、そもそも会話ができないし、データも繋がらないんですよね。
庭山:そうですね。日本のBtoBマーケティングは遅れていると言うと、違和感を持たれる方もいっぱいいるんです。たとえば、MAを導入した会社に「MAを何に使ってらっしゃるんですか?」と聞くと、「メールを配信しています」という答えが返ってくる。その企業にとってマーケティングの定義が単なるコミュニケーションであったなら、「メールを配信している=MAを活用できている」となるのでしょうが、私から見れば導入失敗です。
MAというのは、デマンドジェネレーションのプラットフォームとして生まれたものですから、MAを入れたからには、良質な案件を営業や販売代理店、海外の現地法人に安定供給して、売り上げに貢献しなければいけない。そして、どれくらい売り上げに貢献したのかを定量的に可視化しなければいけない。そこまでできていないと、MA導入が成功したとは言えません。この定義で測ると、今1万社ほどあると言われているMAの導入企業の中で、導入に成功している企業は数パーセントしかいないと思います。
山口:「新しいマーテクが出ました、では使ってみましょう!」というような動き方をする企業が多いですよね。本来は、何を目的に・どんなお客様に・どんな態度変容をしてほしいから・どんなコンテンツで・どうコミュニケーションしていくか。これらをすべて設計してから、手段としてツールを使うべきです。さらに、おおもとの事業戦略と紐づけて設計する必要があります。
庭山:だからこそ、やはり企業のトップの理解が必要なんですよね。
まずはMAに慣れよう、シナリオを設計してメールを出してみよう。導入1年目はこれでOKです。2年目は、定量的な効果測定をしていきましょう。3年目には売り上げに貢献できるようになりましょう、とMAの活用は段階的に進んでいきます。ところが、企業のトップが「MAの予算出したよね、SFAの予算出したよね。さぁ、いくら売り上げに貢献してくれるんだ?」と言ってくる。
たとえば、最短24ヵ月の営業のリードタイムが必要な企業で、MAを導入した年に売り上げに貢献できるわけがないですよね。そんなことすら説明しないと理解してもらえない企業もあるんです。やはり、経営層がマーケティングを学ぶということが非常に重要で、この問題が現場で一番大きいような気がしています。