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ダイバーシティから考える、新しいマーケティング・コミュニケーションの視点

企業の“女性応援メッセージ”はなぜ炎上するのか?働く女性とZ世代に響くリアルなメッセージの勘所


 働く女性というと、「頑張る」「ハツラツ」「イキイキ」「キラキラ」などイメージが固定されがちな今日。そのなかには、頑張る姿を「男性っぽい」と称賛する風潮や、男性ばかりが登場する「女性活躍の応援メッセージ」など、当の働く女性たちからすると違和感しかない表現があふれている。なぜ、企業や自治体が出す女性への応援メッセージは、時に大きな炎上を呼ぶほどズレているのだろうか。この問題について、ダイバーシティをテーマにマーケティング支援に取り組むAmplify Asiaの白石愛美氏が、女性のキャリア支援や、企業・自治体向けに女性活躍推進コンサルティングを手がけるスリール代表取締役 堀江敦子氏と語り合った。

対立構造が生まれる応援メッセージ、そこに“リアル”はあるのか?

白石:女性の社会参加が当たり前となって長いですが、企業が「働く女性に対して発信する応援メッセージ」の多くは、なぜか炎上してしまうものがあります。

 たとえば「わたしは、私。」というコピーで、パイを投げつけられる女性が登場した百貨店のCMがありました。あのCMは、「女性」ということで投げつけられる偏見、生きづらさをパイに見立てたものだと思いますが、そうした問題に女性だけが立ち向かう姿に「私だけが頑張らないといけないのか?」と違和感を持つ女性も多かったようです。

 このように企業が考える女性応援メッセージはどうも当の女性たちの感覚とずれていて、それで炎上するケースがありますが、その原因はどういう点にあるとお考えですか?

堀江:「女性活躍」というと、誰かと戦ったり、頑張りを強制されたりというイメージのものが多いですよね。でも、女性に限らず若者もそうなんですが、別に誰かを蹴落としたり、戦ったりしたいわけではないと思うんです。

 戦うのではなく、「自分らしい強みが十分発揮できる、多様性のある環境を作りたい、それを支援したり貢献できたりするのであれば頑張りたい」、そういう気持ちの人は多いはずです。でも、それができないからもがいている、壁に当たって限界を感じている。そういうもどかしさこそ、リアルな気持ちなのではないでしょうか。

 心に届くメッセージには、リアル感が必要です。女性は別にこれまでの男性社会のなかで活躍したいわけではないので、そういう感覚でメッセージを出すと、「それは本人に聞いたの?」「女性たちは本当にそう思っているの?」と違和感しか残らなくなる。作り手側の「女性はこう思っているはず」という思い込みが表現されていて、それ自体がバイアスなんですよね。

 米国では現在、人種や性別、文化、価値観など個々人の多様性をリスペクトし、社会倫理に従って物事を誠実にリードしていく「エシカル・リーダーシップ(倫理的なリーダーシップ)」という考え方が注目されています。日本もそこに進もうとしている最中ですが、そこで求められる誠実な態度がメディアに反映されていない感じですね。

白石:思い込みやバイアスで「こうだよね」とか、「こうなってね」と決めている時点で、もう誠実感はないですよね……。

堀江:そうなんです。むしろ戦うイメージを出すことによって、対立構造になってしまいます。男性もそこから共感の気持ちは出にくいですし、対立構造が際立つことで、現実の働く現場で悪影響が出てしまうこともあります。「戦わないけど、新しい世界を作りたい」という思いをもっと表現することが大切なのかな、と思います。

スリール株式会社 代表取締役 堀江敦子氏
スリール株式会社 代表取締役 堀江敦子氏

「健常者の大人・男性」視点が強い日本でダイバーシティを促すには

白石:働き方についても「バリキャリ」や「ユルキャリ」のように、なぜか女性だけが働く姿勢をカテゴライズされがちですが、女性の多様なキャリア構築をサポートしている堀江さんはこのような状況についてどうお考えですか?

堀江:男性も同じで、生き方を強制されている苦しさはあると思います。また見方によっては「女性は人生を選べる」といえなくもないですね。ただ女性の場合、30歳を過ぎると育児などのライフステージだけではなく、上位職に行きづらい環境など、いろいろな限界を感じ始める人が多くなります。そこで初めて、いろいろな現実に対峙するようになる。「評価は平等かもしれないけど、状況は公平ではない」と。

白石:なるほど。そこで思い浮かぶのが、神奈川県が作った「かながわ女性の活躍応援団」のポスターです。「女性が、どんどん主役になる。」というコピーの下で男性がズラッと並んでいるポスターなんですが、違和感が拭えません。男性側の意識の変化についてお感じになっていることはありますか?

堀江:全ての男性とは言いませんが、特に男性の管理職以上の意識の傾向は「支援」なんですよね。「ほら、僕たちは門戸を開いているから、ここまでおいで」と子どもに話しかけているような(笑)。彼らとしては、自分たちで頑張って努力してこのポジションに就いていて、「単純に蓋を開けてみたら男性ばかりだった」と思っている場合が多い。だから「僕たちは門戸を開いているから、いらっしゃい」と言っている。

 ただ実際は、同質性の中で上がるチャンスをもらっている場合が多いです。この要素に気づいていないと、このような表現になってしまうのだと思います。日本全体が「健常者の大人・男性の視点」で作られているのが現実で、その中心にいる人は自分の置かれている優位さを理解できないのだと思います。

白石:そのあたりが表現に滲み出ている場合も多いのかもしれませんね。毎年公表されている「The Global Gender Gap Report」でも、日本は2021年も変わらず先進国で最低レベルだった現実があります。

 一方海外に目を転じると、日本では職場で言いづらく、悩みを抱えている女性も多い「生理」や、生理にも直結している「子宮」をテーマにした、「#wombstories(ウームストーリーズ:子宮の物語)」が、「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」で大きな注目を集めました。

 女性の働き方を考える時には、今までは議論し合えなかった生理などのタブーイシューについても議論をしていくことが必要事項の1つだと思いますが、日本の職場環境はどのような状況だと感じていますか?

堀江:今は「彼氏いるの?」と聞くこともセクハラになりますし、やっぱり聞けないですよね(笑)。そういった議論ができるようになるには、普段の関係性がとても重要になってきます。ポイントは2つあります。

 まず女性側が、自分は何を求めているのか、何が大変なのかをきちんと説明する。伝える力(ヘルプシーキング力)が必要です。弊社の研修では、理想のキャリアを踏まえて自己開示をする能力を高めていきます。

 そしてもう1つは、社内でそういった対話ができるように経営者が会社の環境を変えていくことです。メルカリやサイボウズなどは、そうした仕組みづくりがとても上手で、社員同士で「なぜこれが必要なのか」をコミュニケーションして制度を作っていく風土があります。自己開示の前提に心理的安全性の確保が必要です。

 そういうと、「ダイバーシティは配慮をしないといけない」ので煩わしい事項と思ってしまうかもしれません。でもそれは逆で、「多くの人が活躍できるようにする」ことがダイバーシティの1つの目的なので、実は企業にとっては確実にプラスになるはずです。なぜなら、そうすればみんなが活躍してくれる基盤をつくることにつながるのです。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

白石 愛美(シライシ エミ)

コーポレートコミュニケーション コンサルタント 株式会社Amplify Asia 代表取締役WPPグループにて、リサーチャーとして主にマーケティングおよびPR関連プロジェクトに従事。 その後、人事コンサルティング会社、電通アイソバーの広報を経て、ダイバーシティを起点に企業のマーケティングをサポートする株式会社Amplify Asiaを立ち上げる。株式会社Amplify Asia https://www.amplify-asia.com/

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/26 12:15 https://markezine.jp/article/detail/37295

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