2社の共通点は「パーパス/ミッションドリブンな姿勢」にあり
浦上氏はこれらの成果が「全員野球」によってもたらされたと語る。

「事業部横断のデータ活用チームを組織し、ペットショップ事業部やブリーダー・シェルターを顧客とするプロフェッショナル事業部らと共に獣医師監修のコンテンツ作成や、コンバージョンに向けた施策の最適化などを行いました。マーケティングだけでなく、他の部署も巻き込んだ体制作りがデータ活用において重要なのだと実感しました」(浦上氏)
それぞれの取り組みを聞いた野口氏は、2社の共通点が「パーパス/ミッションドリブンの姿勢」にあると述べた。
「お2人とも顧客にどういうサービスや体験を提供したいかが前提にあり、そのためにデータをどう活用するかという順番で考えられていますよね。メーカーさんもそこまで取り組んでいるのだなと勉強になりました」(野口氏)
セッションの聴講者から寄せられた「課題が複数ある場合にどうやって優先順位を決めるか?」という質問に対し、池田氏・浦上氏ともに「マトリクスを活用している」と回答した。
池田氏の場合は、費用と効果の2軸でマトリクスを作成し、課題を整理。その上で“少ないコストで大きな成果を得られる課題”から着手するのだという。
重要かつ緊急でない課題へいかに注力できるかが肝
浦上氏は緊急度と重要度の2軸でマトリクスを作成。そうすると必然的に“重要かつ緊急”な課題の優先度が高くなってしまうが「実は“重要かつ緊急ではない”ところにこそ力を注がなければならない」と主張する。
「“重要かつ緊急”な課題に取り組むのは当たり前です。緊急性が低いことを理由に取り組みを後回しにすると、その課題は永遠に残り続けるでしょう。私は“重要かつ緊急ではない”ところにどれだけ時間と労力を注ぐことができるかが勝負の分かれ目だと考えています」(浦上氏)
野口氏も「メンバー全員がある程度納得しなければ推進力が生まれないので、マトリクスを用いて課題の優先度を見極めることは有効」であるとしながらも、議論に時間を割きすぎると顧客への価値提供が遅れてしまうと指摘。「全員が納得感を持ち、リターンがありそうな課題からトライしてみて、その間に議論の深掘りや調査を行うと良い」とアドバイスを送った。
ディスカッションの最後に野口氏は「データ活用はまず“内側”から」とポイントを総括。自社のデータを整理し眺めてみることで、メンバー全員に共通の認識が生まれたり、それまでは気付けなかった課題に気付けたりするのだという。一方で、打ち手を考えるフェーズにおいてはデータから離れることも重要であると述べた。
「顧客インタビューや競合分析、自社のミッションなどと向き合い、またデータに戻る――このように2点を行ったり来たりするとバランスが取れた最適解を導き出せるのではないでしょうか」(野口氏)