データの中に埋没せず、外部環境にも目を向けよ
まずは店頭で「クロスセル割引」を実施したところ、大きな効果を実感。一方ECでは「梅雨のジメジメする時に、こんな靴下と下着を身に着けませんか」とオケージョン軸で商品を紹介し、わかりやすいメリットを示した。
コロナ禍の影響を受け店舗をクローズした同社では、受け皿となるほどにECが事業として育っていないという大きな課題があったという。そこで、ECサイトを訪れる理由を作るためにWeb限定商品を企画。また、380万ダウンロードされているアプリからECへの導線を強化したところ、サイト流入が大幅に増加するなど大きな成果を得られた。
池田氏の話を受け、野口氏は「どのデータに着目するかという勘所はセンスや経験によるところが大きく、はっきりとした正解がない」と話す。その上で「F2転換率」「クロスセル率」「クロスユース率」に着目した経緯を池田氏に尋ねた。
池田氏はこれらのデータに着目した背景として「自社の持つ歴史と市場動向」を挙げた。
「当社は40年以上ビジネスをやっており、女性の認知度は70%程度あります。つまり、ビジネスとしては成熟期にあたるので、ここから新規顧客を獲得するよりも、既存の顧客を育成していくフェーズにあります。加えて、人口減という外部環境も考慮すると既存顧客を大切にするべきだと考えました」(池田氏)
また池田氏は、自社が掲げるミッションとの関連にも触れ「世界中の女性がおしゃれを楽しめる社会の実現には、様々な商品を1回きりではなく高頻度かつ継続的に買ってもらう必要がある」と説明した。
野口氏は「データを見ることは大切だが、データの中に埋没してしまうのではなく、自社の歴史やミッション、外部環境を含めて総合的に判断することが大切」とチュチュアンナの取り組みを総括した。
リード獲得手法のDXとMA活用でCVRを2倍に
ロイヤルカナン ジャポンはペットフードのメーカーだ。一頭一頭の犬と猫を“真に健康な状態”に導くことをミッションとし、そのために獣医師・ブリーダー・ペットショップなどの専門家と協働しながら製品を販売している。浦上氏は同社で事業部を横断したデータ戦略を統括している。

同社のミッションを実現するためには「ペットの月齢が若い時から正しい知識による最適なフード選びを支援する必要がある」と浦上氏。しかしながら同社には「月齢の若い犬・猫を飼う顧客のリードを最も獲得できるチャネルにおいて、デジタルリードが5%程度しか取れていない」という事業課題があった。
それゆえ獲得したリードにアプローチするための手段がオフライン中心であった点も課題に挙げ「DMは郵送コストが高い上、クーポンの使用期限が迫った顧客にリマインドができなかった」と振り返る。
そこで、浦上氏はDXに着手。リードの獲得方法を申し込み用紙からデジタルに移行したところ、月齢の若い犬・猫を飼う顧客のデジタルリード獲得率が100%に伸長。オンラインとオフラインの獲得リードを合算すると、デジタル移行前の2倍に増加したという。
リードの獲得率が上がったところで、MAを用いて300以上のコンテンツに基づくナーチャリングを実施。その結果、リアル店舗の初回CVRは約2倍になり、総合栄養食のD2Cにおいてもダイレクトマーケティング経由のCVRが約2倍となった。