3つのDotに共通するカルチャーは「ポジティブ自己中心主義」
さて、これらに共通するカルチャーは何でしょうか。キーワードは「私」ではないかと考えています。伝統的な日本社会では、「私」よりも「公」を優先すべきという規範があり、「私」を優先することを「自己中心的」「自分本位」と呼び、ネガティブなこととしてきました。
しかし時代とともに価値観に変化が生じ、「自分がどうしたいか、どうありたいか」と、「私」を中心に置いて大切にすることはむしろポジティブなことではないか、という価値観が強まっています。元々ファッションなど自己表現の分野や教育現場などで徐々に広まっていた、「自分らしさ」を大切にする価値観が「生き方」にまで広がっているイメージです。この潮流を「ポジティブ自己中心主義」と呼びたいと思います。

カルチャーから見えてくる、新しいインサイト
最後に、発見したカルチャーである「ポジティブ自己中心主義」が今後インサイトにどのような影響を与えそうか、考えてみたいと思います。
一例として私は、これからこの潮流が広まると同時に「迷う人たち」も増えていくのではないかと思います。なぜなら、「自分がどうしたいか」は常に明確であるとは限らないからです。「流行っているか」「世間で良いとされているか」が基準であれば答えは明快ですが、自分の意思が基準であれば、その意思が何なのか、と向き合わなければなりません。であれば、その意思決定をしやすくするための選択肢や情報へのニーズが高まるかもしれません。
みなさんはどう感じられたでしょうか? 本連載では、今後もTBWAが実践するConnecting the Dotsの手法を使いながら、実際の事例からカルチャーを洞察していきます。Dotからどのようなカルチャーや新しいインサイトを見出すかは人によって解釈や考え方がまったく異なることが多いため、ぜひ周囲の方と議論を楽しんで楽しんでみてください。