情報疲れから始まったニューウェーブ「受動化」
「4.受動化」は情報疲れからくる現象です。昨今は情報爆発とも言うようにサービスやコンテンツの氾濫、つまり「触れる情報が多くなりすぎた」状況です。
「2.動画化」も「3.短尺化」も「触れる情報が多くなりすぎた」状況に対するコンテンツの生存戦略であったわけですが、ユーザーはそうした状況に辟易しつつあります。そもそもコンテンツを選択し、消費することにも「疲れ」を見せ始めています。

スティーブ・ジョブズが黒のタートルネックのシャツ、ジーンズ、スニーカーのスタイルを常時貫いていたのは、「余計なことに選択のエネルギーを使いたくなかったから」という有名な話がありますが、この話が示すように選択とは非常にエネルギーを使うものです。
ましてや、星の数ほどあるサービスやコンテンツからいくつかを選ぶことは、相当量のエネルギーを消費していることでしょう。この反動として「4.受動化」が起こります。つまり「能動的に自ら選択してコンテンツを消費する」のではなく、「機械が選択したコンテンツを受動的に消費する」ことをユーザーは無意識のうちに求めるようになってきたのです。
音楽ストリーミングサービスのSpotifyや動画コンテンツサービスのNetflix、プロが選んでくれた洋服をレンタルできるサービスairClosetなどが急成長した大きな要因は、これらのサービスの「レコメンドの精度が高いから」、つまり「ユーザーが受動的でいられるから」だと考えています。
このように、「自ら選択して消費する」よりも「すでに選択されたものを受動的に消費する」形式のものが今後ユーザーに受け入れられるようになっていく、これが「4.受動化」という流れの概観です。
今、マーケターがTikTokに取り組むべき理由
まとめると、まずインターネットが登場してマス主導からソーシャル主導にマーケティングのあり方は大きく変わりました。スマホが登場し、インターネットのアクセシビリティが高まったことから、Webサービスの乱立と情報の氾濫が起こりました。この状況に対して人々は自分が時間を使うサービスやコンテンツをシビアにジャッジするようになりました。その流れにおいて評価されるのは「スマホ最適化」され、「動画」「短尺」のフォーマットを纏い、「受動」的な体験を提供してくれるサービスやコンテンツになったというわけです。
ゆえに、ソーシャルマーケティングにおいても今後「スマホに最適化」され、「動画」や「短尺」というフォーマットに則り、「受動」的な体験を与えてくれるコミュニケーションが覇権を握っていく、というのが変節点後の世界の姿かと考えています。
ここまで生活者の間で起こってきた変化について順を追って丁寧に解説してきました。そうした理由はここまで理解してようやくTikTokの本当の凄さがわかるからです。
結論として、TikTokは「1.スマホ化」「2.動画化」「3.短尺化」「4.受動化」の流れすべてを先回りして満たしている唯一無二のプラットフォームであり、だからこそ全世界を席巻しているのだと考えています。
2020年に世界No.1ダウンロードを記録したTikTokは(Apptopia調べ)、もはや単なるブームでは終わる気配がありません。これまでのSNSとは異なる性質をもつプラットフォームだからこそ、ビジネス活用面においても大きな可能性が残されていると言えます。
次回以降、TikTokがここまでユーザーに支持されている理由をより具体的に解説するとともに、ビジネスにおける可能性を紐解いていきたいと思います。