「スマホ化」に始まる若年層の新たな動き
まず「1.スマホ化」ですが、これは言わずもがな、人が時間を注ぐ対象がスマホに移ってきているという話です。
インターネット黎明期は、インターネットに接続するためには自宅や特定の施設で大型のPCを使用する必要があり、インターネット利用は少し「億劫」な代物でした。

そこからガラケーが生まれ、さらに便利でリッチなインターネット体験を享受できるスマホが生まれました。こうしてインターネットを利用するハードルは非常に低くなりました。
今や、スマホをもっていない人を探すほうが難しいくらいにまでスマホは普及しています。スマートフォンの利用率は全世代平均で92.7%、生活者は1日あたりの平均ネット利用時間は約3時間、つまり起きている時間の20%近くがスマホなどのデバイスに注がれていることも明らかになっています。
インターネット利用の簡易化によってWebサービスが大量に誕生し、情報が爆発的に増加したのが2010年代から2020年代にかけてです。そうした状況下、若年層を中心に新たな現象が起こっています。
それは、サービスやコンテンツに対する「シビアなジャッジ」です。ジャッジは大きく2段階に分けて行われています、第1段階が「スマホ最適になっているかどうか」です。こちらは非常にわかりやすいジャッジです。無数のサービスやコンテンツがネット上に存在するようになっているため、ユーザーは「スマホで使いやすいかどうか」をまず判断します。
また、Googleが検索エンジンのアルゴリズムでも、Webページの評価ポイントの1つを「スマホフレンドリーかどうか」としていることからも、スマホ最適化の流れは無視できないものであることがうかがえます。今後この「スマホ最適化」競争は激化し、競争に敗れたものは次々に淘汰されていくことが予想されます。
第2段階が「タイムパフォーマンスが高いかどうか」です。「時間あたりの機能的/情緒的価値の量」が非常にシビアにジャッジされます。
この現象を表している非常におもしろい例が、最近若者の間で流行っているコンテンツの「同時視聴」や「1.5倍速視聴」です。これはまさに「自分が投下した時間に対して得られるリターンをシビアに求めている」ことから来る行動でしょう。
サービスやコンテンツが増えすぎて飽和した現在、ユーザーは「コンテンツすべてをさばき切ることはできないがなるべく多くを楽しみたい」と考えています。こうした中、サービスやコンテンツへの「効率」を求めるようになったこともまた自然な流れと言えます。
タイムパフォーマンスを「動画化」で解消
このように「タイムパフォーマンス」をシビアにジャッジするようになった中で生まれたのが「2.動画化」です。

まず「2.動画化」ですが、ニールセンの調査によると実際にスマホでの平均動画視聴時間は月間で7時間13分、日単位に直すと14分で、先ほどのデータと整合するとスマホを利用している時間のうち約8%は動画視聴に当てられていることがわかります。
定性的にもYouTubeやNetflixと言ったサービスの台頭を加味すると、ユーザーが時間を注ぐ対象が「動画コンテンツ」になっていく流れがあります。
大手プラットフォームからもわかる「短尺化」の兆し
次に「3.短尺化」ですが、平たく言うと「時間尺度の短いコンテンツが好まれる」ようになったということです。

前述したコンテンツの「同時視聴」や「1.5倍速視聴」現象からもうかがえるように、ユーザーは「タイムパフォーマンス」を求めています。その分母である「時間」を減らすことで対応した解がコンテンツの「3.短尺化」というわけです。
この流れは大手プラットフォームの動きを見ても読み取ることができます。YouTubeが短尺動画を視聴できる機能「YouTube Shorts」をローンチしたことは、「3.短尺化」の流れを裏付ける大きな動きであると言えるでしょう。
ここまでWebサービスの乱立と情報流通量の爆発的増加にともない生まれたユーザーの「シビアなジャッジ」が、コンテンツの「2.動画化」と「3.短尺化」をもたらしたことを述べてきました。そして、今後ユーザーの間で新たに起こってくると予想されるのが「4.受動化」の流れです。