産後大きく変わった仕事への価値観
志賀:産後、自分の仕事やキャリアに対する価値観に変化はありましたか? 私自身は、子どもが生まれたことによって、より仕事に対する熱量が大きくなり、ポジティブに働いているなと感じています。
加藤:価値観の変化は、すごくありました。家族との時間を大切にしたいと思うようになったのはもちろんですが、子どもがこの先100年生きていくと考えた時、少しでもより良い世界を作りたい、1日のうちの8時間なり10時間なり、自分が働く時間を世界をより良くするために使いたいと思うようになりました。資生堂への転職は、こうした思いが強くなったこともきっかけでした。
資生堂は、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」というミッションを掲げています。このミッションに感銘を受けて転職したので、子どもの存在はキャリアチェンジに大きく影響したと思います。
志賀:育児と仕事の両立を考慮してキャリアを考えていくと、時に消極的になってしまうこともあるかと思いますが、ポジティブに前に進むきっかけになったんですね。素敵です!
加藤:そうですね。子どもとの時間を仕事に使っているのだから有意義に使わなければ、と自分への良いプレッシャーになっています。それが原動力になっているので、以前よりも短い時間で質の高い仕事をすることにフォーカスするようになりました。
社内にとどまらず、社会に向けたアクションも
半澤:加藤さんのおっしゃる通り、私も出産してからのほうがエネルギーが高まったと思います。子どもが幸せに暮らすためには、子どもの周りにいる人達も幸せであって、さらにそれが続いていく社会でないといけない。このような考えが強くなり、社会でのソーシャルアクションにも力を入れ始めました。現在、一般社団法人CancerX(がんに関する課題解決に向けたコレクティブインパクトプロジェクト)の発起人と共同代表理事をしており、これは母を癌で亡くしたこともありますが、子どもたちが生きていく社会を幸せにするために動かなければ、という思いもあります。
志賀:ちなみに、お二人は、出産前から自身のキャリアについて具体的に設計されてきましたか?
加藤:私はメーカーで仕事をしたいということと、デジタルコミュニケーションの領域でもっと力をつけていきたいという2点はずっと考えていましたが、それ以外は特に意識していなかったですね。
半澤:私は学生の頃から仕事をするのを楽しみにしていたので、結婚した際にできれば子どもは早めに産んで、マネジメント職につく年齢になった時に仕事に集中できるようにしたいとは考えていました。また、自分のやりたいことを社会に仕掛けていくという仕事のスタイルを続けたいと思っているので、定年退職後にもそうした仕事を続けるためには、定年まで会社にいるほうがいいのか、早めに新しい世界を探すほうがいいのかは考えています。ですが基本的には、今後のキャリアやビジョンは具体的に決めずに進んでいってもいいかなと思っています。