※本記事は、2021年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』70号に掲載したものです。
D2Cの次に来る「DNVB」
株式会社博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザイナー 佐野 拓海氏
慶應義塾大学経済学部卒業後、博報堂の社内ベンチャーであるSEEDATAにプランナー兼アナリストとして参画。主に生活者リサーチ、新規事業開発、新商品開発、ブランディング、サービスデザインなどの業務に従事。働きながら慶應義塾大学システムデザインマネジメント研究科にて、新ブランド開発手法の研究を行い、修士号(システムデザインマネジメント学)を取得。現在はSEEDATAから博報堂のミライの事業室にビジネスデザイナーとして移籍。著書に『DNVB生活者の義憤から生まれるブランド』(SDG)
欧米では日本より以前、2008年頃から、D2C(Direct-to-Consumer)と呼ばれるビジネスの形態が勃興し始めました。米国にはアパレル、コスメ、食品、飲料などの日用品、耐久財、サービスなどを扱うD2Cが数多く存在します。
また、日本では「サブスクリプションサービス」という言い方で表現され、月額や年定額で配送するD2C型のビジネスを展開する企業が増加しています。そういった意味で、D2Cは「洗練された直販」として、日本でもかなり普及してきているといえるでしょう。そして、D2Cは近年米国を中心に新たなステージに突入し、さらなる進化を遂げています。それがDNVB(Digitally Native Vertical Brand)というスタイルです。
D2CとDNVBは日本では明確に分類されておらず、同様のものとして扱われがちですが、私は米国のDNVBを徹底的に調査分析し、明確に分類しています。D2CやDNVBなど、似ているようで異なる新しい言葉が登場することには必ず意味があり、それぞれの背後にある文脈、達成したい目標、提供したい価値が異なります。「取引形態が製造直販だから同じようなもの」と考え、思考停止すると、本来の大切にすべき点を見落としてしまいます。なぜこれらの言葉が登場したのか、その理由を考えることでD2C、DNVBをより理解することができます。