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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケター理子の成長記~パーパスドリブン・マーケティングを学ぶ~

イチ組織にこだわらない。社会参加への実感を生む鍵とは【マンガで学ぶ:コレクティブ・インパクト】

コーポレート/プロダクトの分断はもったいない

 この連載も終盤に差し掛かり、パーパスドリブンな事業づくりもいよいよ佳境を迎えています。

 このコラムでも何度か言及していますが、パーパスは作っただけでは機能しません。そして事業はマルチステークホルダー、従業員をはじめとして、最後に買っていただくお客さんまでの、あらゆる人たちの心をパーパスで1つにするのが理想形であると思います。

 ところで、この連載では「ブランド」パーパスをテーマにしていますが、ブランドにはコーポレートブランドやプロダクトブランドといったいくつかのレイヤーがあります。そして企業がある程度の規模になると、マーケティング担当はマーケティング業務だけ、コーポレート系の担当はコーポレート系の業務だけ、となりがちではないでしょうか。

 もちろん人事異動による入れ替わりはあるものの、同期でもない限り、部署が違う人とはあまり交わることがないという方も多いように思います。現在のようにリモートワークが一般的になると、なおさらそういう傾向があるかもしれません。

 筆者は複数の企業にお話をお聞きする機会がありましたが、大企業になると特にコーポレートブランディングとプロダクトブランディングはそれぞれ別の部署が担当しているということが多く、分断しているように感じることがあります。時には、プロダクト系のマーケターたちがコーポレート系の「稼ぎにならない」活動を軽んじているような雰囲気を感じることもありますが、これは非常にもったいないことのように思えます。

 特に、中心にパーパスを据えた時、マーケティングは単に儲けを得るという活動ではなく、いかに社会を良くするかというアクションになりえます。このような活動を突き詰めていくと、パーパス、つまり目的達成のためにはマーケティング系の活動以外にも、様々なアプローチがありえることに気づきます。

 今回は、そのような活動事例をいくつかご紹介します。テーマは本編と同じく「コミュニティ支援」です。

世界に学ぶ“コミュニティ支援” マーケティング知識が活きる時代

 1つ目は、世界的な薬品メーカーGSKの「PULSE」です。PULSEは、コーポレート系の活動、人材研修の1つとして位置づけされます。社員がセーブ・ザ・チルドレンのようなグローバルNGOに最長で6ヵ月間出向し、NGOの人間として課題解決に携わるというものです。

 GSKはより多くの人々に「生きる喜びを、もっと」届ける、というパーパスを持っています。社会課題解決の最前線ともいえるグローバルNGOに、短期のボランティアではなく長期間所属するという体験は、参加者だけでなく関わるコミュニティにもポジティブな影響をもたらしているということが、レポートでも説明されています(PULSE およびグローバルボランティア2016 年 年次インパクトレポート』PDF)。

 同じくコーポレート系の活動として、ネスレの「グローバル ユース イニシアチブ」も素晴らしい取り組みです。

 150年以上の歴史を持つネスレは、さらに次の150年を見据え、若者の育成に力を入れています。社会の持続可能性を高めるためには若年層の教育が重要であり、それをサポートすることが長期のコーポレートブランディングになり、社会の成長が企業の成長をもたらすという理念のもと、若者や女性の就労支援、ビジネススキルの習得を支援しています。

 これはステークホルダーの期待に応え、社会全体の未来に貢献するような、ど真ん中のCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)活動といえます。

 最後に紹介したいのは、P&Gの洗濯用洗剤ブランドTideの「Loads of HOPE」です。

 上記2つとは違い、プロダクトブランドのマーケティング活動の一環として行われたこの活動は、洗剤ブランドらしく「誰もが清潔な衣服にアクセスできる」ことを目指して実施されている活動です。

 最初は被災地の支援のため、大型洗濯機を積み込んだトレーラーで現地に行き、住民の服を無料で洗うという活動から始まり、貧困地域における子供たちの衣服を洗う活動や、コロナ禍での医療従事者のサポートなど、様々な形で継続されています。

 プロダクトブランドの活動でありながら短期感のキャンペーンに終わらないこの取り組みは、CSR活動にも通じるところがありますし、P&Gはこの活動を企業ブランドの広報や、投資家向けの統合報告書でもアピールしています。

 もちろん、服が洗えず困っている人々にとって「Tideが希望をもたらした」という体験は、長期的なブランド価値の醸成にも貢献することでしょう。

 いまやパーパスドリブンな活動は、マーケティングの領域だけではなく人事やCSR、コーポレートブランディングなど、あらゆる領域で実践することが重要です。これからはマーケティング活動を通じて得たスキルや経験が、畑違いの部署でも十分に活かせる時代なのかもしれません。

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/05 07:00 https://markezine.jp/article/detail/37667

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