結局、TikTokでモノは売れるのか?
MZ:日経トレンディと日経クロストレンドが発表した「2021年ヒット商品ベスト30」では、「TikTok売れ」が1位となり、話題になりました。一方マーケティングに本格的に取り入れるかどうかは、様子見の企業も多いと思います。ずばり、TikTokで本当にモノは売れるのでしょうか?
森:「TikTokでモノを売ろうとしてうまくいかず、期待外れだった」と言われてしまうことも度々あるのですが、それは間違っています。
私は直接的なCVポイントはライブ配信などの長尺動画に取り入れていて、短尺の動画はその前段階の認知・集客に使うようにしています。つまり、TikTokのような短尺動画でいったん認知を取って、そのユーザーをライブ配信に集客し、ライブ配信の中でモノを売っていく。この導線を作ることがポイントなのです。モノを売る以外にも、ライブ配信の場でLINE公式アカウントに登録してもらったり、アプリをダウンロードしてもらったりといったCVポイントが考えられます。
現時点では今紹介したような使い方が良いですが、TikTokの中国版「抖音(Douyin)」では、ライブコマースが非常に盛り上がっています。TikTokも2021年2月にShopifyとID連携し、直接購入が可能な動線ができたため、近い将来、日本でもライブコマースが主流になっていくはずです。
田中:抖音では、口紅を非常に素直にレビューする「口紅王子(Austin)」という人がいて、3時間で10億円以上の売り上げを記録したそうです。
森:中国では製品やブランドに対する信頼性が低く、インフルエンサーの紹介のほうをより信頼する、という背景があるため、まったく同じ状況にはならないかもしれません。とはいえ、インフルエンサーマーケティングは日本でもかなり定着しているので、あり得る話です。
大手企業こそTikTokの“コンテンツを刷り込む力”を活かせる
田中:TikTok売れについて、最近ヒットしたのは「本」や飲料の「ファイブミニ」で、いずれも書店やコンビニなど、身近なところで手に入る商品です。この動きをみていると、リアル店舗で商品を流通させている大手メーカーこそ、TikTokを運用したほうがいいと言えるでしょう。メーカーのアカウントを作るのもいいですし、クリエイターとのタイアップでも良いと思います。
森:逆にEC専売のスモールビジネスの場合は、高額商品との相性が良さそうですね。中国とは違い、日本は近所のリアル店舗で購入する人も多いので、1,000~2,000円の低単価の商品をECで売り伸ばしていくのはかなり大変です。
大手メーカーが運用する場合、既に商品やブランドの認知度が高いため、先ほどの専門家アカウントのようにコンセプトにこだわるより、その企業が、どうユーザーに寄り添っているかを伝える駆け橋として使うのが良いでしょう。ほかのTikTokerがUGCで投稿したコンテンツと絡む、一般人の投稿に対してリアクションして繋がる、他には開発者の話や働いている様子を出すなどが考えられます。
たとえば、ドミノ・ピザさんのアカウント(@dominos_jp)では、普段はみえない製造工程のレーンを映したコンテンツがバズっていました。オープンな経営で好感度が上がりますよね。何度も観ているうちに、後々「ピザを頼もう」という場面で、「ドミノ・ピザにしようか。好きだし」と思うようになるのではないでしょうか。
田中:TikTokはコンテンツを刷り込む力が強くて、どんどんマインドシェアに入ってくるんですよね。TikTokで3日に1回ドミノ・ピザを観ていたら、もう絶対「ドミノ・ピザしか勝たん」となる……(笑)
森:普段からユーザーやユーザーに近いインフルエンサーに絡んでいたりするのも良いですね。大手企業は「このメーカーを応援したい」と思わせる投稿をし続けることが重要です。
MZ:TikTokのイメージがかなり具体的になりました。今日はありがとうございました。