コメント欄を工夫してコンテンツの質を高める
MZ:コンテンツの作り方も、他のSNSとは異なるのでしょうか。
田中:TikTokのアルゴリズムは“コンテンツファースト”で、他のSNSと比べて、アカウントのプロフィールがユーザーに閲覧されにくい構造です。アカウント全体でブランディングしていくよりも、一つひとつのコンテンツでメッセージを届けましょう。
また、ファン育成の観点では「コメント欄の活用」が鍵になります。TikTokはコメントをしやすいUI/UXになっているため、比較的コメントが付きやすいのです。そこで、コメントでアカウントの人間性を積極的に見せ、ユーザーと深く関わっていき、「一人のユーザー」から「濃いファン」になってもらうようにします。前回も紹介したドミノ・ピザさんは、ここが上手いですね。
森:前回お話しした専門特化のアカウントでは特に、ユーザーからの質問コメントを引用してコンテンツを作るのがおすすめです。続けることで、要望に応え続けることで新しい要望が生まれるサイクルができていきます。他にも、ツッコミどころを動画内に入れたりしてコメントしやすい文化や仕組みを作るのも有効です。
これが上手なのが「岡野タケシ弁護士【アトム法律事務所】(@takeshibengo)」のアカウントで、ユーザーからの質問を「質問きてた!」というセリフとともに回答していくフォーマットが確立されているほか、弁護士という堅い職業なのに時々コスプレをして登場するなど、ツッコミ待ちのコンテンツも盛り込んでいます。
@takeshibengo Q:変わった法律ってありますか?##tiktok教室 ##法律 ##弁護士 ##クローン
♬ original sound - 岡野タケシ弁護士【アトム法律事務所】
また、コメント欄を開いているときに動画はバックグラウンドでループ再生される仕様のため、滞在時間を伸ばすという意味でも効いてきます。滞在時間が長く、繰り返し視聴されると、TikTokのアルゴリズムに良いコンテンツと認識され、リーチされやすくなります。
田中:動画単体でなく、コメントも含めて設計することで、本当にためになるコンテンツを作ることができます。「ギフト侍」は情報量が多く、なおかつ再生速度が少し速いため、多くのユーザーは2~3回観てくれます。とはいえあまりにも多く観なければ理解できないと、ユーザーを疲れさせてしまうため、具体的な商品名や購入場所、金額感、おすすめポイントはコメント欄にまとめるようにしています。これには圧倒的な「いいね」がつきます。そして「これまでに紹介したアイテムは、Instagramにより詳しくまとめているよ」と、その他のSNSも絡めながら、アカウント全体の質を高めています。

@gift_zamurai #ad 最後ラブラブすぎた
TikTokマーケティングに今後起こりうる変化
MZ:最後に、今後のTikTokマーケティングを見通すうえで重要な要素はありますか?
森:今後の変化については、大きな要素がいくつかあります。1つは2021年2月にTikTokはShopifyとID連携をしました。これにより、興味から直接購入に至る動線ができました。「抖音」にてすでに追加されているLIVEコマース等の新機能が国内でも追加され、ユーザーの年齢層が上がってきたことで、TikTokと相性の良い事業体にも変化が見られると思います。
田中:また、2021年7月にTikTokの動画尺が60秒から3分になりました。長尺化により1投稿あたりに含められる情報量が増えたのです。つまり商品単価が高いもの、購入決定までにある程度の商品説明が必要なものなど、購入へのハードルが高い事業体も、しっかり教育ができるようになるので、TikTokで売れる事例も出てくると考えています。
MZ:本連載を通じて、TikTokへの理解が深まりました。ありがとうございました。