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企業広告は99%社員に向けて発信している。ビジョンをマーケティングで体現できるサッポロビールの強さ

全社員が理念・ビジョンを理解し、アクションに繋げるために

MZ:パーパス・ブランディングでは、パーパスを策定した後の社内への理解・浸透活動こそが大事であると言われます。サッポロビールでは、掲げる理念体系を社員に根付かせるために何か活動をされていますか?

武内:全社的な取り組みもあれば、マーケティング部門での取り組みもあります。まず、私が統括するビール&RTD事業部では、私が担い手となり、理念体系に基づいてマーケティングを行うことの重要性を何度も繰り返しレクチャーしています。

 加えて、「いちばん星マーケティング実践プログラム」という対話を通したセッションを開始しており、今後も定期開催を予定しています。これは、マーケティング部門全体の100人強に向けて行っているもので、5人くらいのグループに分けて「なぜいちばん星マーケティングが必要なのか」「なぜ熱狂的なファンが必要なのか」など、サッポロビールでマーケティングをやる意味について議論し合い、最終的にはメンバー全員が「カイタクしよう、○○を」と自分の行動規範やアクションプランに落とし込みます。ポイントは、プログラムの内容を毎回同じものにすることです。そうすることで、前回とは違う気づきがあったり、前回はよくわからなかったことが自分の中で整理されたりと、小さな成果や成長を社員自ら実感することができると思っています。

MZ:対話を通して、自分ごと化させているのですね。

武内:はい。我々が今やろうとしているのは、マーケティングの型を作ることです。この時、与えられた型にはまるのではなく、対話型のセッションを繰り返し行うことで文化を醸成し、自ら型を作っていく必要があります。

 そして、そうした型の基準となるのは、やはり経営理念やビジョンです。「いちばん星マーケティング実践プログラム」などの取り組みを通して、自分の日々のアクションと経営理念・ビジョンを結び付け、サッポロビールならではのマーケティングの型に繋げていくことが重要です。

MZ:全社的にはどういった取り組みを?

武内:「カイタクトーク」というものを行っています。まず社長の野瀬から全社員に向けてサッポロビールの経営理念やビジョン、ありたい姿、社長の想いについて直接話す機会を設けた後、ここでも「カイタクミーティング」という所属部署単位の対話型のセッションを実施し、最後は全社員が個人のアクションにつなげられるような取り組みをしています。緊急事態宣言中は基本すべてオンラインで行いましたが、今後はリアルも併用して実施する予定です。状況を見ながらにはなりますが、その時々でベターな方法を選択し、進めていきたいと考えています。

サッポロビールらしく市場を牽引する「いちばん星マーケティング」

MZ:では、いま展開されている「いちばん星マーケティング」について、どういった戦略なのか詳しく教えて下さい。

武内:サッポロビールの行動規範には、「カイタクしよう」という言葉があります。サッポロビールのルーツは開拓使による「開拓使麦酒醸造所」であり、醸造技師であった中川清兵衛は、日本人で初めてドイツで本格的にビール醸造を学びました。サッポロビールそのものが開拓の歴史であり、「カイタク」というのは我々の存在意義であると思っています。

 「誰かの、いちばん星であれ」というビジョンを実現するためにあるのが「カイタクしよう」という行動規範です。ですので、いちばん星マーケティングにも「カイタクしよう」というのが考え方のベースにあります。具体的には、「新しいお酒の魅力をカイタクしよう」「独自のブランド選択理由をカイタクしよう」「熱狂的なファンをカイタクしよう」と3つのカイタクを掲げています。

 特に重要なのは、新しいお酒の魅力と熱狂的なファンの開拓です。お酒は嗜好品の最たるもので、時代とともに価値や意味がどんどん変わっていきます。コミュニケーションツールとしてみんなでお酒を楽しむという価値も普遍的なものとしてありますが、今後はよりパーソナルな楽しみ方が増え、存在価値も変わっていくでしょう。そうした変化を捉え、新しいお酒の魅力を創造し、提供していかないことには、我々の未来はありません。

 そして、お客様がサッポロビールから得られる価値や、ブランドの世界観に共感して下さる熱狂的なファンの方々に我々は支えられています。そういう方々と一緒にブランドを共創し、サッポロビールらしく市場を創造・牽引していくのがいちばん星マーケティングです。

 たとえば、「サッポロ生ビール黒ラベル(以下、黒ラベル)」では、ブランドの世界観や個性への“共感”から選ばれる存在になることを目指し、中長期的なマーケティングを展開しています。ビールを選ぶ時の基準として、「売れているから」「泡・コク・キレ」なども当然あるでしょう。ですが、我々はそうではなく、ビールを人のような存在にして「この人と付き合っていきたいんだ!」と選ばれるブランドでありたい。実際に、今黒ラベルを支持して下さっているお客様は、味もさることながら、そういったブランドの世界観や考え方、個性に共感して下さっています。これは、既存のビールブランドでも新しいお酒の魅力や、新しいビールのカテゴリを開拓できていることだと自負しています。

MZ:「ビールを人のような存在に」という言葉がありましたが、具体的にはどういったイメージでしょうか?

武内:これに関しては、実は明確に定義しているものがあります。たとえば、黒ラベルは「常に憧れられる表現者」エビスビールは「新しい未来を創る先駆者」というブランドパーソナリティを定義しており、これを際立たせるようなコミュニケーションやアクションを意識しています。マーケティングを考える上での、判断基準になっているとも言えますね。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/01/04 07:00 https://markezine.jp/article/detail/37935

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