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リゾームマーケティングの時代

2022年、フィンテック・アドテック・プライバシーテックの融合で生まれる新たなビジネスチャンス

本物と偽物――2つの相互関係の中にビジネスチャンスがある

 東野圭吾氏の『分身』は、このような最先端のバイオテクノロジーの理論や技術を背景に書かれている。人間のアイデンティティや尊厳にも関わる問題であり、誰もが本物でありたいと願う心理を見事に突いている。

 そして、オリジナルから派生した「分身」として生を受けた人間、つまり、生命工学で作られたコピーの人間にも、本物とは異なる「分身」としての生き方を尊重する、そこに「意味」や「価値」を見出すようなエンディングが、爽やかで、救いになっている。

 「分身」でも生きる意味があるよ。あなたはあなたのままでいいんだよ。そんな包み込むような優しい社会への希望がある。

 社会的包摂で守られて多様性を許容する未来の社会は、クローン人間やサイボーグ、アンドロイドの生き方も尊重していくべきなんだろう。

 この東野圭吾氏の『分身』に影響を受けたのではないか? と私は思ったのだが、「Bunsin」というサービスが最近、リリースされた。このサービスの開発者は、株式会社DataSignで、同社はプライバシーテック関連のツールやコンサルティングを提供している。

 「Bunsin」は、まだ招待制のようだが、「代わりのメールアドレスを発行してサービス登録。いざという時に本当の個人情報を守れます」とか、「分散ID基盤と連携して、個人情報を守りつつ自分の必要な属性を証明できます」などの説明がサイト上にある。

 この説明を読む限り、本物の本人のメールアドレスの代わりに偽物のメールアドレスを作って本物の情報が漏洩しないようにするとか、オリジナルの情報を守りながら本人の証明ができるなど、偽物のメールアドレスやデータを、「分身」の立場で逆手にとって、役割を与えているようにみえる。

 オリジナルとコピー。本物と偽物。「何がオリジナルで何が本物なのか?」その相互依存関係の中で、フィンテック・アドテック・プライバシーテックの交差するところにビジネスチャンスがある。本物の証明方法と偽物のコピーの役割を相互に規定することで、本物には本物の役割に応じた「意味」と「価値」が生まれ、同時に、偽物には偽物の役割が新たに生まれ、そこに「意味」も「価値」も発生する。

 偽物がなければ本物の存在意義もない。コピーがあるからオリジナルも飛躍する。

 モノマネ芸人も、おもしろいし、ファンも多い。アニメ『ルパン三世』の声優、栗田貫一氏は、モノマネ芸人だった。初代声優の山田康雄氏のモノマネでブレイク。そして、本物になった。

 オリジナルとコピー。本物と偽物。それらの「意味」や「価値」は、相互依存関係にある。その関係性の中に、ビジネスの萌芽があるからこそ、プライバシーテックが急成長し、「Bunsin」というサービスも出てきたのだと思う。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/16 08:00 https://markezine.jp/article/detail/37962

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