「“本物”と“偽物”をどう見分けるか」が課題に
フィンテック領域では、個人のお金が絡むのでより厳格な対応が要求される。本人の知らないところで、勝手にスマホのウォレットアプリから税金の自動引き落とし設定などをされると困る。本人が設定したのかどうか? 本人の同意済みなのか?
オリジナルとコピー。本物と偽物。「何がオリジナルで何が本物なのか?」eKYCなどの技術もあわせて、「本人確認、本人認証、本物の本人の同意取得済みなのか?」それが我々に突き付けられた課題だ。
フィンテック・アドテック・プライバシーテックが連携するところに、「意味」と「価値」が生まれ、ビジネスチャンスが転がっている。だから、虎視眈々と狙っている人たちも多い。
だが、ここでは、オリジナルかつ本物の本人による同意取得が証明できないケース、たとえば、コピーされた個人データの懸念もあるし、成りすましの偽物の同意取得かもしれない訳で、その場合、残念ながら、「意味」も「価値」も生まれない。あるいは、制裁金などの処罰の対象にもなるのだ。どうやって、「意味」と「価値」を作っていくのか。業界全体のチャレンジでもある。

本物のコピーを可能にする、デジタル技術
そして、最先端のデジタル技術の一つに、DNAとゲノムの領域がある。
『タイム』誌が2014年に「世界で最も影響力のある100人」の一人に選出し、さらに2018年に「医療におけるトップ50人」の一人にも選出した、ハーバード大学医学大学院遺伝学教授、デビッド・A・シンクレア氏は著書の中で、DNAがデジタル情報だからこそ、若返ることができると主張している。
「クローン技術が見事に証明している通り、私たちの細胞は若い頃のデジタル情報を高齢になっても保持している。若返るためには、傷を取り除く研磨剤を見つけさえすればいい。そしてそれは見つかると、私は確信している」(『LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界』デビッド・A・シンクレア,マシュー・D・ラプラント著)
DNAはデジタルデータであって確実にコピーできるからこそ、体細胞のリプログラミング(ある意味で、若返り)の可能性も理論的にあり得るし、当然、クローンも可能になる。
「DNAはデジタル方式なので、情報の保存やコピーを確実に行うことができる。途方もない正確さで情報を繰り返し複製できる点においては、コンピュータメモリやDVD上のデジタル情報と基本的に変わらない」とデビッド・A・シンクレア氏は書いている。