幸せな体験を提供するアプリが競合に
天野:コロナ禍という難しい時期にローンチしたサービスにも関わらず、トリマは一気にグロースしていて素晴らしいです。北谷さんが担当されているマネタイズと集客の観点から、成功要因はどこにあるとお考えですか。
北谷:元々私が広告収益によるマネタイズのノウハウを持っていたことと、業界に知り合いが多くいたことは大きいかもしれません。広告の接触頻度が少ないとインプレッションも上がらないので、ユーザーが納得のいくタイミングを意識しながら出面を設置しました。
あとは相性の良いアドネットワークを探して回ったことですね。各社に直接コンタクトを取ったり、担当者をつないでもらったりしながら「配信数がこれだけ伸びる可能性があるからCPMを上げてほしい」という地道な交渉を続けました。
集客については、市場との相性や競合の入札があまり多くないという運によるところも大きいです。ただ、獲得においてはセルフサーブの出稿先を探し、できるだけ自分たちで広告を運用するスタイルを貫いています。代理店を通して出稿するとどうしても当たり外れが出てしまいますし、クリエイティブのクオリティをコントロールするのが難しいので、基本的にはインハウスでやっています。
MZ:ポイ活アプリというジャンルならではの特徴をお聞かせください。
北谷:競合サービスの捉え方でしょうか。たとえばゲームアプリの場合、ユーザーがスマホに向かう時間を他社のタイトルと奪い合うことになりますよね。一方トリマはスマホを起動していなくてもポイントが貯まる仕組みなので、他のポイ活サービスを同時並行で利用いただけるんです。
そのぶん、競合サービスはポイ活アプリや位置情報アプリに限らないとも言えます。たとえばトリマでは、ユーザーにインセンティブとしてコンビニのコーヒーを還元しているんです。「週に1度、無料でコーヒーが飲める」という幸せな体験を継続利用の動機にしていただきたいというねらいがあり、より大きな幸せを提供するアプリがあれば、そこが競合になります。
人は慣れによって新鮮さを感じなくなるので「コーヒー無料だけでは満足できない」となった時にさらなるインセンティブを還元できる仕組みや、別の価値を提供できるように意識しています。
ユーザーファースト主義と視座の高さがモバイルヒーローの共通項
MZ:この連載ではLiftoff Mobileが運営するコミュニティ「Mobile Heroes」から計8名のモバイルヒーローに登場いただき、4回に亘ってお話を伺ってきました。過去の取材と北谷さんのお話を振り返ってみて、9名の共通項はどこにあると思われますか。
内藤:お客様に寄り添う姿勢です。皆様のキャリアこそ十人十色でしたが、達成すべき指標やゴールを追いつつも、北谷さんのようにユーザーの方々への価値提供を考え続ける姿が共通していました。
天野:アプリマーケターというお立場でありながら、サービスを代表し事業全体を見渡す視座の高さは全員に共通していたと思います。ビジネスの状況を語る際も、自社比だけでなくマーケットの中でどう成長しているかを話してくださる方が多かったです。きっと社内も社外もマクロに見ていらっしゃるのだと思います。