オンラインコミュニケーションでも「一体感」「チームワーク」は作れる
――サイボウズには「チームワークあふれる社会を創る」というビジョンがあります。社内での協業体制を高めるために、意識されていることはありますか?
サイボウズは、普段からオンラインでのコミュニケーションがメインになっており、社内のコミュニケーションは機密事項などを除いて、基本的にオープンになっています。公開チャンネル上で仕事をしているような感じです。
そのような中、企業のハブとなる役割があるマーケティングの部門として大事にしているのは、普段から交流をすること。我々がすごい施策を企画したとしても、実行しきれないと意味がありません。他部門と意識合わせをし、しっかりコミュニケーションを取ることが重要です。
この時、企画を考えた時だけ顔を出す人って信頼されないと思うんですね。普段から開発や営業のやり取りにも少し顔を出したり、やり取りにいいねを付けたり、また自分たちがやっていることもちゃんと発信していく。こういった普段のコミュニケーションが、仕事のクオリティ向上に繋がっていくと思います。
――オンラインコミュニケーションだからこそ、できることでもありますね。では、コロナ禍でのコミュニケーションで困ることも特になかったのでしょうか?
実は、コロナ禍になって、社内のkintoneの書き込み量が5倍に増えました。これは、社内Twitterのような感覚で、「今から仕事始めます」「原稿書くので集中します」などと社員がつぶやく「分報」のスレッドができたから。この分報のおかげで、離れていても、まるで隣に座って働いているような一体感が生まれています。ちょっとした雑談から生まれるアイデアなども、リアルよりは減りますが、失われてはいないと感じています。
――最後に、大槻さんと同じく人材育成や組織強化に取り組んでいる読者へ、一言アドバイスをいただけますか。
サイボウズとしてのポジショントークのようになってしまうかもしれませんが、「こうしてほしい」「こうあってほしい」といったリーダーの考えを押し付けることは諦めて、一人ひとりの「何をしたいか、どう働きたいか、どう生きたいか」という意思に寄り添い、その働き方を実現してあげてほしい、と思います。会社が自分を認めてくれているという心理的安全性からモチベーションが高まり、結果的にチームの強化につながります。何事も結局、それをやるのは「人」なので、職場の社員にやる気がなければ、新しい施策や改革を行っても絶対に成果は出ないでしょう。ですので、上司やリーダーがまずやるべきは、良い環境と良い人間関係、安心できる職場を作ること。そこで所属欲が満たされたチームメンバーが積極的にチームの成長に貢献する、という順番を心掛けると良いのではないでしょうか。
※ ティール組織:個々の社員に意思決定権があり、社員の意思によって目的の実現を図ることができる組織形態。サイボウズでは、意思決定と管理監督のクオリティを上げるために、「だれでも取締役」の取り組みも行っている。
