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第106号(2024年10月号)
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1から学ぶインサイト発掘の手法

消費者の「既成概念」を見つけるのが第一歩。消費財メーカーで実践してきたインサイト発掘の手法

ブラマネになったつもりで、インサイト発掘をしてみよう

 これを読んでいただいている方は、新しく男性用スキンケアカテゴリのブランドマネージャーに就任したと想定してください。

男性消費者のインタビューを通じて、たとえば、

「スキンケアは少しずつ習慣化してきたが、美容液は男性が使うものではない。」
「スキンケアは夜にすることが重要。」
「スキンケアは肌荒れや乾燥を防ぐために行っている。」

 といった発言があるとします。これらは間違ったニーズではありませんが、インサイトを発掘しようとする際に、これらを「消費者の凝り固まった既成概念」と考えると、面白い事が見えてきます。男性化粧品を取り扱う会社のブランドマネージャーは、これらの固定概念を通じて、どのようにインサイトを見つけ出すでしょうか。

 先に結論を伝えると、下記をインサイトとして最終的に導き出しました。

1. 男性が一番肌状態を整えたいのは朝である。なぜなら一日の中で最も自分の顔をまじまじと見る瞬間は仕事に行く準備をしている朝だから。

2. 男性は肌のキメや乾燥よりも、顔色やむくみの状態を気にする。なぜならお酒を飲んだ翌日や仕事で遅くなった翌日などは、肌の表面の状態よりも、顔の血色やむくみのほうが影響が出やすいから。

3. 美容液は良いものと考えているし、使用したほうが良いと思っている。ただし、化粧水や乳液に加えて使用すると肌がべたつくので、ステップを増やしすぎたくはない。

 スキンケアの(1) 使用場所・時間、(2)フォーマット、(3)ニーズ、の3点の既成概念を深掘りした結果、導き出したインサイトです。男性消費者の中で、「スキンケアは、夜に丁寧に行うもので、洗顔とせいぜい化粧水と乳液を使用し、乾燥を防ぐもの」という既成概念がありましたが、よくよくインタビューを継続していくと、実は自身の肌状態を最も気にしているのは朝ということがわかり、また、気にしているのは乾燥・キメというよりも、変化の激しい顔の血色やむくみであることが見えてきました。そして、美容液には抵抗はなく良いものと捉えていますが、ステップを増やすことがネックでした。これは前提のインタビューで出てきた言葉を既成概念として捉えて深掘りしなければ出てこない、潜在的なニーズ=インサイトになります。結果、このインサイトに応えるために、むくみを解消したり、顔色を明るくする、朝専用の男性スキンケア美容液の開発に着手する、という流れになります。

先入観を持たず、消費者の気持ちになりきる

 消費者調査チームと一緒に調査した結果、以上のようなインサイトを発見することができました。ブランドマネージャーがターゲットと同性・同世代であっても、このようなインサイトを、インタビューなどの調査や分析なしで、自身の経験で自ら導き出すことは非常に難しいです。正しい消費者調査をした結果、今までのメンズブランドでは発見できていなかったインサイトを発見できたことになるのです。

 インサイトを発見する上で先入観は邪魔になってしまいますので、客観的なデータや情報を基に、できるだけ消費者の気持ちになりきって、消費者に没入して考える必要があります。

 次回は発見したインサイトを基に、ベネフィットをどのように考えていくかを解説します。

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism
代表取締役

ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/02/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38130

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