企業の課題毎に、高度な販促設計が求められる
MarkeZine編集部(以下、MZ):近年、多くの企業が会員ユーザーデータの活用によって、顧客一人ひとりとの有効なコミュニケーションを目指している状況です。電通デジタルではそのような企業を支援する立場として、どのような声を聞くことが多いでしょうか。
杉江:いわゆるリーチやブランディングの向上に加えて、売上や事業貢献に対して、よりダイレクトに影響する購買起点のマーケティングプランを重視する声が大きくなっていると感じています。
具体的には、直接的に購買リフトさせたい、という要望が多い印象です。リーチからモチベーションを上げ、購買まで促す流れを設計するような販促プランが第一に求められています。
杉江:次に、事後購買リフトです。一度購入した方が再購入に至ったか、購入後ブランドファンになってくれたかという購買継続性に対して、オフライン・オンラインを融合させながら販促設計する形です。ともすれば需要の先食いに陥るリスクのある販促施策をフロー型からストック型に転換させていくニーズが非常に高まっている訳です。
これについては課題もあって、たとえばメーカーの場合、直接の接点が流通業者になってしまうため、購買者のデータが溜まりづらい構造になっています。そのため、継続購買者の捕捉が難しい。流通業者とのデータ共有、協力体制を作るために、メーカーから流通業者、引いてはその先の購買者にどのようなベネフィットが提供できるか、そのあたりの関係性も考慮した設計が必要だと思います。
LINEが形成する「経済圏」「生活圏」の進化
MZ:電通デジタルでは、メーカーを中心とした企業に向け、LINEの関連サービス活用によって生まれた新たな経済圏への参入を支援していると伺いました。新たな経済圏とはどのようなものですか?
杉江:LINE、楽天、Amazonなどのプラットフォーマーが形成する、新たな経済圏が成り立つためのキーファクターは2つで、個人のIDと購買データです。
たとえば、LINEの場合、LINE広告を見たユーザーがLINE Payで買い物をする、キャンペーンに参加してLINEポイントをゲットする、というような流れが生まれます。各ファネルにおけるサービスを同一プラットフォーム内で完結できるような仕組みを、新たな経済圏として認識しています。
またLINEに限った視点でいえば、既に経済圏を超えた「生活圏」が形成されている状況です。
LINEは日本人の約70%、およそ8,900万人が使っているコミュニケーションアプリです(数値は取材当時のもの)。生活の中でLINEのサービスに触れる機会は多く、先ほど例に挙げたLINE PayやLINEポイント、最近ではLINEミニアプリなどを介して、あらゆる属性のユーザーから行動や購買に関わるデータを得られる強みがあります。
杉江:コミュニケーションアプリならではの「つながりやすさ」も重要なポイントです。ユーザーは企業のLINE公式アカウントと簡単に友だちになることができますし、不要になったらブロックすればいい。つながったり離れたりがボタン1つでできる気軽さがあります。
企業が顧客データを直接収集するために独自ネイティブアプリを提供する動きも活性化していますが、新規アプリをダウンロードする障壁も高い中で、その一歩手前で顧客とつながるプラットフォームとしても、LINEは注目されています。
このように、ユーザーとプラットフォーム間の関係が築きやすい中で、各顧客行動ステージにおけるLINEサービスが複合的に展開されています。購買を中心とした消費行動全体が「見える化」され、企業はそれに対して適切なソリューションを提供できる、一大生活圏が完成しつつあるな、と感じています。