健全なカルチャーなくしては何も始まらない
――そうした中で、山口さんはとりわけ組織のカルチャー改革に注力されてきました。
2021年の10月から、カルチャー&マインド改革推進室の室長を兼任しています。企業の変革、WHYとWHATの実践は、健全な企業カルチャーなくしてはできません。健全なカルチャーとは、現場から良いことも悪いことも包み隠さずに声があがり、まわりもその声にきちんと耳を傾け、全社で変革を進められる関係性がある状態のこと。さらに、リーダーは、小さな変化にも敏感であることです。
個々の能力を最大限に活かせる、みんなが働きたいと思う会社作りも、DXをドライブするパワーも、すべてカルチャーがベースになります。たとえどんなに良い企業戦略があり、スキルのある人を外部から採用したとしても、会社のカルチャーが腐っていたらまったくワークしませんし、お客様にも適切なソリューションを提供できないと考えています。
ただし、カルチャー改革には「これをやればいい」といった絶対解はなく、いろいろな施策に複層的にトライしていくしかありません。CNS社だけでも数万人の従業員がいますから、システマティックに整えたところも数多くあります。
たとえば、オフィスデザインをフリーアドレス制のオープンなレイアウトに変えました。社長室もありませんので、樋口もみんなのすぐそばで働いています。その他、全体集会を昭和スタイルからモチベーションが上がる演出を取り入れた「All Hands Meeting」へ変えたり、名刺のデザインを変えたりと、社員の意識改革に取り組んできました。人事制度では、1on1ミーティングの導入や360度評価に加え、エンプロイー・エンゲージメントサーベイを行い、その結果にも丁寧に対応しています。あわせて、オープンなコミュニケーションをしやすいように、TeamsやYammerを活用し、社内ウェブも参加型のコミュニケーションプラットフォームへと大きくリニューアルしました。
そして、カルチャーの改革は、強いリーダーシップがあってこそ。CNS社では、役員からカジュアルコミュニケーションを意識し、服装などのフォーマリティを排除した上で、情報発信を強化しています。これは、企業の戦略であり、マーケティング部が人事と連携しながらリードしています。
――戦略的にカルチャー改革を進められてきたのですね。
カルチャー改革は、企業の根幹です。失敗や弱みも言える、心理的安全性のあるフラットな組織にしていかなければ、バッドニュース・ファーストにならないでしょう。どんなにきれいなキーワードや広告を作っても、本質的に素晴らしい会社でなければ、良いブランドは作れません。やはり、その企業で働く従業員自身が事業や自分の仕事にプライドを持つことが大切です。
これらは、一朝一夕ではできませんし、みなさんの協力があってこそのものです。大手企業のカルチャー改革には反発があるのでは? と思われるかもしれませんが、小さな成功の積み重ねから、「変わっていくんだ」と社員の中で期待感が生まれ、浸透していったと感じます。衆知を集め、より良くしていこうと考え、行動する。そのようなことができれば、ビジネスを変革する組織としてマーケティング部を機能させることができると、私は信じています。