購買行動パターンに基づく「インフルエンスファクター」メソッドとは
そこでトレンダーズではSNSユーザーを対象に定量・定性調査を複数実施し、「属性」ではなく「購買行動パターン」を軸にSNSユーザーを分類しました。この考え方を「インフルエンスファクター」として体系化しています。

興味深いことに、調査結果から「従来のターゲット分類では同じ属性に当てはまる場合でも、SNSでの購買プロセスに影響を及ぼす要素は人によって大きく異なる」ということが判明したのです。“SNSからの購買”という態度変容を目指すのであれば、見逃すことはできない結果でしょう。
インフルエンスファクターでは、調査の中から浮かび上がってきた共通項を整理し、縦軸が「ヒト型/モノ型」、横軸が「ソサエティ型/パーソナリティ型」というように購買行動への影響要因を大きく4つに分類しています。それぞれのパターンについて、SNSからの購買行動例がイメージしやすい化粧品を例にして解説します。
4つの「インフルエンスファクター」とは
(1)オーディエンス:「いろいろな人が良いと言っている」
SNSにおけるクチコミの多さや、ランキングの高さ、話題性などを重視しており、「たくさんの人が支持している商品だとわかる」ことが購買における最大の影響要因になるケース。
1つひとつのクチコミをじっくり見るというよりは、SNSで検索をしたときに直感でたくさんの人がいいと言っているかを判断する傾向にあります。そのため、年齢、ライフスタイル、肌質など様々な人に商品を体験してもらえる施策でクチコミのバリエーションを生み出すのが効果的です。

(2)トラスト:「好きな人が良いと言っている」
SNS上に、センスや審美眼を信頼できる憧れの人・好きな人がおり、「その人が支持をしていると知る」ことが購買における最大の影響要因になるケース。
いわゆるインフルエンサーによるPRが効果的です。ただフォロワーが多いというだけではなく、ライフスタイルや思想を支持するコアファンがいて、なおかつ商品を自然な文脈で紹介できる人物を起用できるかが鍵になります。インフルエンサーの言葉がよりリアルに、ダイレクトに伝わる、ライブ配信などの手法も相性がいいでしょう。

(3)ナレッジ:「他と比べて良いものだとわかる」
ヒトを信頼して買うのではなく、自分自身で商品の特性をチェックし、他の製品とも比較したうえで「何がどのように良いのか納得できる」ことが購買における最大の影響要因になるケース。
美容商材であれば、美容のプロフェッショナルによる機能性の解説コンテンツや、Instagramで人気の文字入れまとめ投稿などが効果的です。「なぜその商品がいいのか」を理解させる必要があるので、商品USPの整理や競合商品とは異なるコピーワークなども重要になります。

(4)ディスカバリー:「好きなものに出会えた」
SNSで情報に出会った瞬間に、好き/嫌い、良い/悪いを判断する傾向があり、「直感的に好き・良いと思えた」ことが購買における最大の影響要因になるケース。
SNSのタイムラインや発見タブを何気なく見ているとき、誰が投稿しているのかもわからないけれど、パッと目に付いたものを直感的に買ってしまうというユーザーが一定数存在するのです。認知から購買まで複数のファネル設計をしていた従来のマーケティングでは考えられないことですが、これはSNSのコンテンツマッチング精度が向上したことで顕在化した購買行動パターンだと考えられます。この場合、一瞬で興味を引くコンテンツが求められます。TikTokのような短尺動画でアプローチするのも良いでしょう。

インフルエンサーVS広告の議論ではなく、コンテクスト設計に重点を
またインフルエンスファクターに関する調査からは、同じ人でも買うもの(商品カテゴリや価格)によってインフルエンスファクターが変わったり、同じSNSでもインフルエンスファクターによってよく使う機能・使い方が変わったりと、属性分類では見つからなかったSNSユーザーの動向が浮き彫りになってきています。
SNSユーザーの態度変容を図るならば、ターゲットやコミュニケーション設計の発想もSNS起点のものに変えていくべきなのではないでしょうか。

・調査期間:2021年10月28日~31日
・調査対象:10~40代女性802名(普段SNSを使用している方)
・調査方法:インターネット調査
これまでSNSマーケティングというと、「インフルエンサー投稿と広告、どちらが良いか」「どのプラットフォームが良いか」「どのインフルエンサーをキャスティングするか」といったように、手法論に目が行きがちだったように思います。しかしその前段階である「どのインフルエンスファクターを、どのように刺激するか」という、コンテクスト設計がより重要になってきていると言えます。