ターゲット設計やインサイト起点のプランニングがより重要に
生活者の意識・行動にSNSが大きく影響するようになった現在、トレンダーズがこの連載でもたびたびお伝えしてきた、ターゲットごとにメッセージや手法を変える「マイクロマーケティング」は、もはや当たり前の考え方となりつつあります。緻密なターゲット設計と、そのインサイトを起点にしたコミュニケーション設計が重要であることは、すでに多くの方が実感されていることでしょう。
ところが今、SNSマーケティングはターゲットの捉え方をアップデートすべき局面に差し掛かっていると言えます。ここ10年で生活者の価値観の変化やデジタル広告の発展が進み、従来のデモグラフィック属性による分類だけでなく、興味関心による分類の考え方が浸透してきました。しかし今度はターゲット像を細分化しすぎてマーケティング戦略が複雑化したり、かえって非効率になってしまったりというジレンマが散見されます。
今の時代に合ったコミュニケーションの大きな戦略を描くために、あらためて生活者の特徴を俯瞰し、大別する必要性が高まってきているのではないでしょうか。
そして今の生活者を語る上で当然欠かせないのが、SNSです。本題に入る前に、今のSNSマーケティングで大きな影響を及ぼしている「3つの多様化」について解説します。
SNSマーケティングに影響を及ぼす「3つの多様化」とは
1つ目に挙げられるのが、ユーザー層の広がりです。総務省情報通信政策研究所「令和2年通信利用動向調査」では60代のSNS利用率が6割を超えるなど、すでに若年層だけのツールではなくなっています。
2つ目は短尺動画、ライブ配信など各SNSで新機能の拡充が相次ぎ、コンテンツが多様化している点です。クリエイター並みの表現でリアクションを多く得られるユーザーも多く、UGCが購買に与える影響はどんどん大きくなっています。
そして3つ目が、コンテンツやユーザーマッチングのアルゴリズム精度が上がっている点です。これは2つ目に挙げたコンテンツの多様化と連動していると思われますが、もはやタッチポイントはフォローしている人だけが表示されるホーム画面に留まりません。
日本のSNSユーザーは元々匿名利用が珍しくなく、従来の属性アプローチが適用しづらい部分がありましたが、SNSの多様化現象が加速したことで、より一層その傾向が強まったと言えます。すなわち、自分と似たような属性や興味関心の人からだけ影響を受けるわけではなくなった、ということです。
弊社が随時行っている情報収集に関する調査やプロモーションの結果を見てみても、ターゲットユーザーが参考にしている情報が、まったく別の属性ユーザーからの発信であることは珍しくありません。
わかりやすい例が「美容アカ」です。普段から美容情報に特化した発信をしているSNSユーザーアカウントの通称であり、美容オタクからマス層まで幅広い層の参考にされていますが、その年齢や素性といった「どんな人か」を気にしている方はほとんどいません。「どんな情報を得られるか」がとにかく重要なのです。
このような状況から、従来の属性とは違う切り口で、今のSNSユーザーの実態に即したターゲット設計が必要になってきているのです。