130社のツールと一発連携
オムニチュアといえばWeb解析ツール「サイトカタリスト」が有名だが、わたし自身はオムニチュアの製品の中でも他社ツールと簡単連携を実現した「ジェネシス」というツールに興味を持っている。他社と連携することで、かなりのマーケティング施策の自動化が可能だからだ。
「ジェネシス」は米国で先行発売されており、既にSalesforce.com、ダブルクリックを始め、検索マーケティングパートナーとして、グーグル、ヤフーのほか、電子メールマーケティングの企業や、サイト検索、行動ターゲティングの企業など、130社以上がパートナーになっている。「ジェネシス」は日本でも、近々リリースされることになると思う。
ツール同士の連携はいたって簡単だ。「ジェネシス」を立ち上げると、これらのパートナー企業130社のロゴが表示される。真ん中にはオムニチュアの解析ツール「サ イトカタリスト」のロゴがあり、その周辺のパズルの部品のような型のところに、連携したいパートナー企業のロゴをドラッグ・アンド・ドロップするだけ。そ うすればウィザードが立ち上がり、どのようなデータをどのように連携させるかを選択画面の中から選んで設定していく。技術者でなくても、2つ以上の連携を シームレスに行えるようになっている。
では具体的には、連携させることで、どのようなことが可能なのかをみてみよう。図はあるリード・ジェネレーションのツールを販売するベンダーがWeb上に掲載した広告である。
リード・ジェネレーションとは、見込み客を開拓するツールのこと。このベンダーは2種類の広告クリエイティブを用意した。どちらも図柄、文言はほとんど同じ。ただ1つは「ガイド」による商品説明、もう1つは「ウェビナー」による商品説明になっている。
「ガイド」とは、紙芝居風に説明ページが次々と変わっていくもの。「ウェビナー」はWebセミナーのことだ。「ガイド」ならデータをその場でダウンロードして、すぐに見られるが、「ウェビナー」はその場では登録するだけで、後日、指定の日時にパソコンの前に座って、セミナーに参加しなければならない。果たしてどちらのほうが、効果があるのだろうか。
クリック率が高くても、制約率が高いとは限らない
Web解析ツールを使えば、どちらの広告パターンのほうがクリック率が高いか分かる。Web解析ツールだけで見た結果、クリック率が高いのは「ガイド」のほうだった。
クリック率という判断基準だと、「ガイド」のほうが上だった。Web解析ツールだけを使っているのであれば、今後は「ガイド」の広告パターンに一本化することに決めることだろう。
しかしWeb解析ツールと、CRMを連携させれば、それぞれの広告パターンを通じた見込み客の何%が実際に営業マンと話をしたのか、何%が実際に商品を購入したのか、どちらの広告パターンのほうが最終的な売上増につながったのか、といった数字まで入手できる。Web上のデータを扱うWeb解析ツールと、営業マンによる実際のセールス活動のデータを扱うCRMの両方をつなぎあわせ、まるで1つのシステムのようにつなげることで、広告の究極の効果指標である売上高への影響まで測定することができるわけだ。
その結果、実際に購買直前までいった見込み客は、「ウェビナー」のほうが155%も多かった。実際に、販売につながったのは見込み客は「ウェビナー」が80%多く、売上高は「ウェビナー」が「ガイド」の2倍だった。
つまりWeb解析のクリック率だけみると、「ガイド」広告のほうが効果があるように見えるが、実際の売上に貢献するのは「ウェビナー」広告のほうが上であることが分かる。Web解析とCRMを連携させたからこそ分かった広告の本当の効果である。
購入あきらめた顧客にメールでアプローチ
別の例を挙げよう。
3日後に「父の日」を控え、田舎の年老いた父親にステレオをプレゼントすることを思いついたとしよう。帰宅後に自宅のパソコンからいつものECサイトにアクセスし、あれこれ調べた結果、父親が好みそうな機種を選んだ。
「ショッピングカートに進む」というボタンをクリックし、購入手続きを済ませようとしたところで、電話が鳴った。会社からの電話だ。今すぐに戻らないといけない急用だ。仕方がない。電源を切って、でかけた。親父には申し訳ないけど、当日電話でもしてお茶を濁すことにしよう。会社に到着し、一仕事終えたあと、メールの受信箱をチェックした。いつものECサイトからメールが来ている。
見出しは、「今日、支払いを完了すると、20%オフ」。中身はHTMLメールで、最後にアクセスしたショッピングカートのページの状態になっている。そこで支払いのボタンをクリックするだけで、支払いが完了する。当然、クリックする。20%オフの値段で、親父にステレオをプレゼントできた。親父も喜んでくれるだろう。
ショッピングカートにまで進んでいたのに購入を中止したユーザーが存在することは、Web解析ツールを使えば分かる。ただWeb解析ツールだけだと、そのユーザーに対して「20%オフ」の定型文のメールを送るのは手動になる。
それを、Web解析ツールとメールマーケティング・ツールを連携させておけば、上記のようなメール送付を自動で行えるのだ。人がやるべきことは「ショッピングカートに進んでも購入しなかった」というイベントAが発生すれば、「20%オフのメールを送る」というイベントBを発生させるように設定すること。あとは、イベントAが発生するたびに、イベントBが自動的に発生する。テクノロジーを使った三河屋さん的顧客対応が自動で行われるわけだ。
対応は30分以内に
メールを使った自動マーケティングのツールは日本でもいいものが出てきているが、米insidesales.comは、電話セールスを含む自動マーケティングのツールを提供している。
insidesales.comはもともとナンバーディスプレー機能を提供しているベンダー。電話がパソコンにつながっていて、電話がかかってくるとCRMシステムの中から同じ電話番号を探し出し、電話の主の顧客データをパソコン画面に瞬時に表示するというシステムを手掛けている。CRMなどの手持ちの顧客データベースの中に該当する電話番号がないと、Web上で検索し、該当番号がないと局番などで少なくとも、地域、会社名など推測できる限りの情報を表示する。
insidesales.comはまた、電話があった時点からスタートして時系列で営業担当者がすべき顧客対応をリストアップしており、メールを送るべきところではパーソナライズされたメールを自動生成し自動配信する一方で、営業担当者による電話攻勢が必要なときには、電話をかける前に知っておくべき情報をパソコン画面上に表示しておいてから営業担当者に電話セールスを促す仕組みになっている。
insidesales.comの関係者によると、時系列で業務をリストアップしているのは理由があるという。このグラフは、insidesales.comがマサチューセッツ工科大学などと共同で実施した調査の結果をまとめたもの。顧客から問い合わせの電話を受けてから何分以内に電話をかけたりメールで返答するのが効果的かを示したものだ。この調査によると、最も効果があったのは5分以内。その後、効果は急速に減少し、30分後には効果はほとんどなくなることが分かった。
しかしこれは考えてみれば当たり前のことかもしれない。電話で問い合わせた直後は、まだ問い合わせの内容のことを頭の中で考えているからだ。それに30分後だと、もう電話の近くにいないかもしれない。わたし自身を省みても、多忙な生活の中で、一日たてば、問い合わせたことさえ失念していたり、もうどうでもよくなっていることだってある。
そこでinsidesales.comは、5分以内にすべきこと、24時間以内にすべきこと、2週間以内にすべきこと、その後毎月1年間にすべきことを、すべてリストアップしている。それがこの図だ。
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