戦術・戦略とは何か
「戦術のない戦略はファンタジーで、戦略のない戦術はカオスです」(東氏)
「戦略とは自社はどうあるべきかというマップ」であり、「戦術とは競争相手に対してどう勝つかの勝ち方」だと言い換えられる。戦略に基づいた戦術を、ITを駆使して実行し、顧客の行動を促すことで行動変容が起こり、優良顧客化した結果として収益が拡大する流れが理想だ。
どちらかが欠けたまま単純に施策を展開しても、未来の売上を前倒ししただけで焼畑農業のようになり発展性がない。
では、戦略・戦術の観点からツール導入をする際に、気を付けるべき点はどこだろうか? 東氏はパートナーやツールそのものではなく、役割を整理する重要性を訴える。
パートナーやツールには、それぞれの得意分野がある。あるべき姿を立案する戦略はコンサルタントが、ツールをうまく使う戦術面はベンダーや代理店、アナリストが強みを持つ。
データ分析ツールにはBIとBAがあるが、戦略の実行状況をモニタリングし現状把握するためにはBIによるレポートやダッシュボードが必要だ。MAや機械学習を活用して戦術実行の強化をするためには、BAによる予測や分類、解析を用いて「将来どうなるか」という観点を持たせる必要がある。
データ分析レポーティングツールをひとまとめに考えて、1つのツールで済ませようとしがちだが、使い方を間違えると大失敗につながることがわかる。
戦術強化の秘訣は「いつ・誰に・何を」するか
続いて、東氏は戦術を強化する方法に言及する。ここで登場するのが、「いつ・誰に・何を」するかの考え方だ。
「いつ」については、Googleが提唱するマイクロモーメントという考え方が最適だ。モーメントとは、人が何かをしたいと思ってデバイスで調べたり購入したりという行動を起こす瞬間のことであり、つまり、人が何かを買おうと思う瞬間だ。
「しかし、企業側のスケジュールやできる範囲で実行してしまうと、モーメントと関係なくメッセージを送り続けてしまうことになります。お客様のタイミングをうまく捉える必要があります」(東氏)
この、顧客のモーメントを捉えるために有効な方法が3つある。1つ目が鉄板シナリオの使用。MAツールでも鉄板シナリオが実装されているケースが多く、最も実施しやすい。クリック時・閲覧時・購入時・カートに投入してまだ買っていない時の施策はグローバルで効果が出ている。特にカートに投入した時は買う準備をしているタイミングなので、ここでオファーのメールを届けると良い結果につながる。
2つ目が機械学習の使用だ。大量のデータから機械学習を使って、たとえば来月買う確率が高い人は誰かを予測する。これも、一般的な機械学習でオーソドックスな方法として利用可能だ。
3つ目が、市場と顧客に聞くことだ。たとえば、購入後や入会後、誕生日などに満足度調査を行う。満足度が低いあるいは高い場合にメールを送るといい。また、SNSをモニタリングして、特定の商品が急に話題化した時も狙い目だ。顧客の内、同一の層へレコメンドを出すと反応が変わる。つまり、自社が持っていないデータからタイミングを計るのだ。