「誰に」には仮説が重要
「『誰に』は、セグメンテーションと顧客のスコアから考えます。そこには、ディシジョンできる仮説が必要です」(東氏)
戦術強化のための「誰に」対して行うかを考える際には、仮説が必要だと東氏は強調する。そしてここでも、鉄板シナリオが強力だ。
価格ダウンした商品を見たり買ったりした人、新商品の同じジャンルを見た人など、鉄板シナリオを導入すると「誰」と「いつ」がセットになっているため、非常に効率よくスタートできる。
機械学習についても、データを用いるため信頼性が高い。全100万人の内スニーカーを買う確率が高い上位5万人にメールを送るといったことができる。
また、数年間のデータを使う必要がある場合データ基盤が重要となるが、LTVで決める方法もある。LTVを算出するロジックを構築し、顧客の育成具合をモニタリングしていき、しきい値に達した人へ施策プログラムを実行するのだ。
「買いたいもの」と「売りたいもの」のバランスをとる
最後の「何を」に関して、東氏は社会心理学者のシーナ・アイエンガー氏が発表したジャムの実験を例として紹介する。
試食ブースに24種類と6種類のジャムを並べて、試食率を調べると24種類では60%、6種類だと40%だった。さらに、試食した人の購入率を調べると、24種類では3%、6種類では30%だった。
つまり、種類が多いと興味を惹けるが、実際に購入が発生したのは数が少ないほうなのだ。そして、Webサイトやメールでの商品の表示数でも同様のことが起こり得る。この理論だと、5種類~9種類程度ならば顧客は悩まずに選択でき、その結果について満足できると考えられる。このレンジ内で消費者が欲しいものと、企業が買ってほしいものをいかにバランスさせるかが重要なのだ。
「レコメンドエンジンで何を見せるかだけではなく、行動経済学などに注意して、うまくレコメンドエンジンやパーソナライズを効かせることが大事です」(東氏)
この「何を」を解決するためにも、やはり鉄板シナリオの設定が役立つ。
また、ワインなど嗜好性の強い商材の場合は、売上や閲覧データといった購買パターンだけでなく、ソムリエのおすすめなどAIに人のセンスを取り入れることが重要だ。
加えて、業界・商品によっては機械学習によるレコメンデーション以外が効くケースもある。たとえば旅行の場合は、顧客の好みを取り入れたカスタマイゼーションのほうがいいかもしれない。つまり、データによる自動化や人の感覚・センス導入など、多様なパターンがあるのだ。
全体を見据えたスモールスタートが肝要
「しかしながら、私が言ったことを全部やろうとするとコストが高くなります」と東氏。小さくスピーディーに始めて、成功したら続けるということが大事だと語る。
では、何から手を付ければいいだろうか? 東氏は鉄板シナリオの活用を推奨する。何故なら、仕組みを買えばある程度パッケージ化されているため、短期間でスタートして効果を得られるからだ。
一方で「ツール群はつながっていく必要があると思います」と東氏は強調する。戦術を実施するためのITは、最終的にすべてが1つにつながっていないと意味がない。もちろん、導入の方法は様々だ。先に試作をして売上を出したい企業もあれば、まずはデータ基盤を構築してじっくり戦略から考えたい場合もある。
「ブレインパッドはデータ起点のマーケティング・テクノロジーを網羅して提供しています。そのため、企業様に合った先を見据えたご提案ができると思います」(東氏)
戦略と戦術を意識したツール導入を検討の際は、相談してみると心強いだろう。