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ベビースターのプロモで立てられた「購買増加の図式」 仮説立て→実行→検証まで詳細を共有

行った2つの戦術(プロモーション)は?

 上記の方程式を立てた後、実際には2つのプロモーション施策を実行した。1つ目は、テレビCM+Web広告。2つ目は、竹下製菓の「ブラックモンブラン」とコラボした「ベビースターラーメンチョコアイスバー」、エースコックとコラボしたカップ麺「ベビースターラーメン」の発売だ。

2021年8月にファミリーマート限定で販売された「ベビースターラーメンチョコアイスバー」
2021年8月にファミリーマート限定で販売された「ベビースターラーメンチョコアイスバー」
2021年8月に発売された「ベビースターラーメン カップめん チキン味/ピリ辛チキン味」
2021年8月に発売された「ベビースターラーメン カップめん チキン味/ピリ辛チキン味」

 1つ目の広告施策では、ブランドパーセプションなどの調査結果をもとにクリエイティブを制作。投下量は数百%だったが、それでも「広告の投下はBtoBtoCの場合、リテールを動かす力もある」ことから必須と考えた。

 2つ目については、「予算が限られており、投下量のGRPが多くないことは最初からわかっていたため、ブランドアテンションを補完する意味でブランドのノイズを上げる目的があった」と話す。話題性のあるプロモーションにより、(瞬間的であっても)メンタルアベイラビリティが高い状況を作ることで、購買増加を狙うシナリオだ。

ROASは約450%、KPIを大きくクリア

 では、結果はどうだったのか?

 おやつカンパニーでは、プロモーショントラッキングとして、情報のリーチ(伝えたいことがどの程度届いたか)、アウェアネス(どのくらい、どのように知ってもらえたか)、検索エンジンでのブランド検索数(関心を持たれたか)、SNSでのエンゲージメント(興味を持たれたか)、ブランド純粋想起率(買いたいと思われたか)、そして実績(店頭回転)の項目を設定している。最終的にはROAS(広告費用対効果)、ブランドのNPS(ネットプロモータースコア)で、ブランドの価値が上がったかどうかを見ているそうだ。髙口氏は、これを前提に2つのプロモーション施策の結果を紹介した。

 テレビCMについては、GRPは少なかったものの、プロモーション認知率は15%程度だった。「マスはノンやライトユーザーに効くことが改めてわかった。非計画購買なので、普段あまり意識していない方にこそ届くことが確認できた」と髙口氏。

 他社と組んだ施策については、ノイズアップ施策としての認知率は、カップ麺が40%弱、アイスクリームが約30%で、テレビCMよりも認知率が高いという結果に。特にアイスクリームは、購入理由として意外性や話題性が多く挙げられ、ノンユーザーに効いたことがわかった。

 購入の一歩手前となる購入意向については、純粋想起率が前後比較で13%以上も上昇。「これだけ商品数が多いカテゴリーにおいて、特定期間に想起される率が10%以上も上昇するというのは、価値があるものだと受け止めている」と髙口氏は話し、「ベビースターラーメン」以外の関連ブランドにおいても回転の上昇が見られたと共有した。

 また、先述したとおり、ダブルジョパティの法則では、ノン/ライトユーザーを積極的に取り込み、結果としてLTVと利益を増やすことを目指す。そこで、ユーザーのクラスタ別の効果も調べた。ベビースターブランドの月別購入数に基づき、「H(high)層」「M(middle)層」「L(low)層」の3つの層に分けて見てみると、ノンからの獲得となるL層と、常時購入しているH層で、上昇が見られた。

 そしてROASについても、「KPIは大きくクリアできた」と髙口氏。ブランドグロスで、約450%、ベビースターブランドのメイン商品である「ベビースターラーメン チキン味」に絞っても300%弱と良好な数値で着地した。

意外性・話題性がポイント、だが認知度が低い場合は向かない

 これらの結果を紹介しながら、髙口氏は「ダブルジョパティの法則はある程度当たっていた」と次のようにその手応えを話す。

 「仮説に基づいた打ち手の実行という点については、マーケティング投資としても業績に貢献できたプロジェクトになりました」(髙口氏)

 ポイントは、意外性のあるコラボ商品の販売だが、これはペイド施策ではない上、組んだメーカーからロイヤリティ収入も入ることから、「売り上げを上げながら、新規顧客を獲得するという仕組みであったともいえる」と振り返った。

 結論として、一般的にはパレートの法則に則って8割の利益に貢献する優良顧客を重視するCRMが大切だが、カテゴリーによっては、ダブルジョパティの法則が効果的に機能することが検証された。加えて、新規顧客の獲得には、通常顧客維持の5倍のコストがかかると言われているためリスクもあるが、ノン/ライトユーザーに目を向けることの有効性も証明された形だ。

 「ブランド間の違いはわかっているが、手を出しやすい価格帯で、購買頻度が高い最寄り品であるバラエティシーキング型は、事前のブランド指名率が低いので、瞬間的にブランドを想起してもらえるかが勝負になります」(髙口氏)

 ここでのポイントは、「話題性や意外性があること」だ。ノン/ライトユーザーほどブランドとの距離が遠いため、ブランドの価値を見せるよりも、「こんなことをやるんだ!」という意外性のほうが効く。また、もともとのベビースターのブランド認知度が高かったことが話題性の高さに影響しているとし、「認知度の向上に取り組んでいるフェーズのブランドには、適さないだろう」とも述べた。

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38722

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